類人猿ボノボは知らない子も養子に 進化を探るヒントに
京都大学などのチームは、アフリカ・コンゴ民主共和国に生息する大型類人猿のボノボが、知らない子を「養子」として受け入れる事例を発見したと発表した。チンパンジーなどの大型類人猿では、血縁や群れの中の孤児を育てるケースは知られていたが、他の群れの子を育てるのが確認されたのは初めて。助け合いといったヒトの利他的な行動の進化を探るヒントになるという。
ボノボは進化的にチンパンジーと近い。群れて暮らし、乳離れが4歳ごろと子の成長がゆっくりな点などの共通点が多い一方、チンパンジーは他の群れに好戦的、排他的なのに対し、ボノボは争わない親和的な特徴があるなど、社会性に違いがある。
チームは2019年4月、継続的に観察しているボノボの群れで、もともと2頭の子を育てていた「マリ」が、2歳すぎとみられるもう1頭の子を抱えているのを見つけた。過去の画像を解析したところ、別の群れで暮らしていた子だとわかった。母は死んだとみられる。ふんをDNA鑑定したところ、マリや群れの中に血縁はなかった。
観察を続けると、マリはこの子に授乳したり、おんぶしたりして、実の子と同じように接していた。マリは健常で群れの個体を見分けることができる。チームは、マリが知らない子だと認識した上で、養子に迎えたとみている。19年10月には、別の高齢のボノボが、関係のなかった子を育てている姿も見つけた。
養子を迎えた瞬間は観察できていないが、いずれの事例も群れ同士が遭遇した際に、養親と子が出会ったとみられる。
チームの徳山奈帆子・京大霊長類研究所助教は「ボノボの寛容性が起こした現象だと考えられる」と話している。
研究成果は19日、科学誌サイエンティフィック・リポーツで発表(https://doi.org/10.1038/s41598-021-83667-2)された。(野中良祐)
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