世界遺産に「そぐわない」 馬毛島基地問題、高まる懸念

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屋久島通信員・武田剛 奥村智司 小瀬康太郎
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 馬毛島鹿児島県西之表市)への米軍訓練移転と自衛隊基地整備の計画をめぐり、県が「地元自治体」の一つとする屋久島町で懸念が高まっている。年間に約25万人の入り込み客を迎え、「観光立町」をうたう世界自然遺産の島のイメージ低下が心配されているためだ。

 「何世代にもわたって保護、継承するべき人類共通の財産のそばに、軍事基地という相反するものを造ることが一番の疑問。癒やしを求める観光客で島が成り立っている部分もある。どうお考えか」

 16日、町内であった馬毛島の計画に関する防衛省の住民説明会。「類いまれな自然の中で日々、穏やかに生きている」という女性からの質問に会場から拍手が起こった。

 同省担当者は馬毛島と屋久島が約40キロ離れているとした上で「(馬毛島周辺で航空自衛隊の)デモフライトをやろうと思っている。実際に屋久島でどのような音が聞こえるか、我々もみてみたい」と説明。馬毛島で計画される米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)については「基本的に屋久島上空は飛ばない」と強調した。

 これに対して住民からは「沖縄では当たり前にルートを外れている」との声が上がった。世界遺産の森に騒音が響いたり、米軍の低空飛行の「格好の練習場」とされたりしないのか。そんな懸念の訴えが相次いだ。FCLPが午前3時まで行われるとの説明を受け、未明に出発する縄文杉登山への悪影響を危惧する意見も聞かれた。

 トビウオ漁やウミガメの産卵への影響をただした住民もおり、約90人が集まった説明会での質問は計画に反対する内容が目立った。参加した町民の男性は、自衛隊の駐屯などで経済効果への期待もある種子島の自治体とは異なり、「基地ができれば屋久島にはマイナスしかない」と話した。

計画への賛否、首長は

 荒木耕治町長も2月、塩田康一知事と馬毛島問題で意見交換した際、「『観光立町』を標榜(ひょうぼう)しており、多くの住民が(観光関連の)事業に関わっている。近くに自衛隊施設ができることで風評被害を受けるのでは、と心配している」と訴えた。今月10日の町議会では賛否の表明を避ける一方、世界自然遺産の島に基地は「そぐわない」と繰り返した。(屋久島通信員・武田剛、奥村智司)

 塩田康一知事は昨夏の就任以…

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