母がハマった陰謀論 「結婚に害、縁切る」娘の嘆き

有料記事

村上友里
[PR]

 世界の出来事は、誰かが操っている。こうした「陰謀論」が米大統領選をきっかけにSNSや動画で拡散された。根拠のない情報を信じる人と、その家族や身近な人との溝は日本でも広がっている。

 「ディープステートが陰謀論だなんて思っとるのは日本人くらいよ」

 愛知県の20代女性は2月末、母親からLINE(ライン)のメッセージを受け取った。

 早朝から立て続けに14通。母親が1日8時間ほど視聴しているという、ユーチューブの「Qアノン」に関する動画の影響を受けたとみられる内容だった。

 陰謀論集団のQアノンは「米国の政財界や主要メディアは『ディープステート』(影の政府)に牛耳られており、それに闘いを挑む救世主に選ばれたのがトランプ大統領」と主張する。

 女性は半年間、こうした陰謀論を信じる母親にがまんしてきたが、限界だと感じた。

 母親からのラインの画像に「死にたくなる」とコメントをつけてツイッターに投稿した。

 「私の母親も同じ。電話したくない」「夫も言い始めた」――。1万件以上リツイートされ、同じように苦しむ人たちがいると知った。

 一方、「いいお母さんですね」「お母さん、頑張って情報収集してますね」と、陰謀論を信じているとみられる反応も多かった。「この人たちが母をおかしくした」と思い、怒りを覚えた。

 女性によると、母親はもともと「一つのことを正しいと思い込みやすく、自民党のあらゆる政策を肯定していた」。専業主婦で、人付き合いは少なめだったという。

 変化があったのは昨年夏ごろ。テレビや新聞を見なくなり、韓国や中国を中傷するネットメディアやユーチューブの動画を熱心に視聴し始めた。

 「日本が中国にとられる」。女性や家族に熱く語った。

体調崩し、結婚の話も進まず

 昨年11月の米大統領選をきっかけに「ディープステート」の存在も信じるようになった。

 選挙結果について「裏で中国が糸を引いていた。あらゆる国にある悪の組織のせい」と言った。

 女性は昨春から交際相手と暮らし、母親とは週に数回、ラインでやりとりをしていた。「2人暮らしだと食費がかかる」と愚痴をこぼすと、「トランプが1人当たり6億円振り込んでくれる」と返ってきた。

 交際相手とは結婚を考えてい…

この記事は有料記事です。残り1378文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません