産直事業で飛躍 和歌山発のベンチャー 農業総合研究所

西江拓矢
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 全国の農産物を都市部にあるスーパーの直売コーナーで委託販売する和歌山市の会社「農業総合研究所」が好調だ。登録する生産者は全国に約9400人。取扱店舗は1600超。コロナ禍の巣ごもり需要を取り込み、流通総額は年間で100億円を超えた。同社は、農業が続く仕組みを支えたいという。

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 農業総合研究所は、農家と青果販売を経験した及川智正・代表取締役会長CEO(46)が、2007年に設立した農業ベンチャーの企業だ。和歌山からスタートし、農産物を東京や大阪などのスーパーの直売コーナーで販売。新鮮さや安めの価格設定が人気を呼び、16年には東証マザーズに上場した。集荷場は北海道から九州まで94カ所にある。直売コーナーを設けているスーパーは、阪急オアシス、平和堂、ライフコーポレーションサミットなど。19年9月~20年8月の流通総額は、前期比14%増の108億円となった。

 同社が強みとするのは流通のスピードだ。一般的な市場を通じると出荷から店に並ぶまで数日かかるところ、原則出荷の翌日には店頭に並べる。生産者はより鮮度が良く、完熟の状態での出荷が可能になり、消費者によりおいしいものが届けられるという。JALやJR東日本、米卸大手の神明などとも提携して事業を広げている。

 さらに、生産者が販売に積極的にかかわれる仕組みがある。直売コーナー向けの商品や販売する店舗、値段を生産者が自ら決められるのだ。同社は値付けの参考にできるよう、店舗ごとの売れ行きや、店の特売日などの情報を生産者に提供する。

 販売価格の約6割が生産者の取り分で、残りを同社とスーパー側が受け取る。同社によると、一般的な市場流通では生産者の取り分は3割程度という。

 昨年から続くコロナ禍も、直売事業にはプラスに働いた。外食が減り、在宅ワークで通勤時間が減り、その分料理する時間が増えた。スーパーへ行く機会が増え、せっかく買うなら、生産者の顔が見える方が良い。直売コーナーは、今日と明日で品ぞろえや値段が違って、宝探しのようなアミューズメント感もあるのではないか――。同社はそう分析する。

 同社は手応えを感じ、昨年からは「産直卸事業」に力を注ぎ始めた。生産者から直接農産物を買い取り、ブランディングして価値を高めてスーパーに卸す事業だ。委託販売を進めながら、産直卸を拡大していく方針だ。

 コロナ禍で同社は、取引先が休業するなどして窮地にあった生産者を対象に、緊急買い取り支援も実施した。及川会長は「農産物の流通事業は社会インフラ。止めてはいけない」と実感したという。

 同社の次の目標は、流通総額1千億円。「日本から、世界から農業がなくならない仕組みを作るのが僕らの仕事」という及川会長。「生産者には相場のリスクを抑えて適正な利潤を提供し、消費者にはおいしい野菜と適正な価格で買える仕組みを提供したい」。取り扱う農産物が増える分だけ、より多く提供できると考えている。(西江拓矢)