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記者コラム「多事奏論」　編集委員　稲垣康介

　私と同年代でスポーツノンフィクション好きを自負するなら、山際淳司さんの「江夏の21球」を知らないとは言わせない。

　1979年の日本シリーズの第7戦、広島の1点リードで迎えた九回裏。広島のリリーフエース、江夏豊が無死満塁の大ピンチをしのいだ21球を切り取った出世作だ。

　その山際さんがソフトボール界の伝説の男を描いた短編「回れ、風車」を知る人は、おそらくガクンと減る。

　プロとアマ。メジャーとマイナー。今回のコラムは、そんな明暗を主題にしたい。

　その「伝説の男」に話が聞きたいと思い立ち、連絡を取った。スポーツ記者としての後ろめたい気持ちを内に秘めて。

　「僕は高校時代から裏番組で…