フェノロサも魅せられた天平の十一面観音

久保智祥
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聖林寺(奈良)

 天平彫刻の最高傑作として名高いのが聖林寺(しょうりんじ)の十一面観音立像(国宝)だ。木心乾漆造りで像高209センチ。威厳のある顔立ちに、広い肩に引き締まった腹部の均整のとれた体軀(たいく)、天衣(てんね)や指先の表現もじつに優美で、「ミロのビーナス」とも比肩するとされる。

 もとは大神(おおみわ)神社の神宮寺・大御輪寺(だいごりんじ)の本尊。明治維新の神仏分離の際、聖林寺に移され、米国人美術史家のフェノロサも魅了されたという。造像された奈良時代は疫病も流行した。倉本明佳住職(52)は「疫病退散を願う必死の思いが自然と手を合わせたくなるような美しさを生み出したのではないでしょうか」。

 像を安置する収蔵庫の大規模改修のため寺での拝観は5月9日まで。工事の間は東京・奈良の国立博物館で展示される。現在は輸送に備え蓮弁(れんべん)が外されている台座にも、細密な曲線で文様が施されているのがわかる。通常は見えない部分もおろそかにしないところに、像に込められた真摯(しんし)な思いが見えた。

 《メモ》 奈良県桜井市下692、電話0744・43・0005。近鉄・JR桜井駅から談山神社行きバスで「聖林寺」下車。拝観料大人400円など。東京国立博物館での特別展は6月22日~9月12日。奈良国立博物館では来年2月5日~3月27日。(久保智祥)

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