リターナブル瓶に足柄の水 大井の会社が新商品

村野英一
[PR]

 再利用できるリターナブル瓶入り飲料を製造する神奈川県大井町の会社が20日、県産ミネラルウォーターを発売する。マイクロプラスチック海洋汚染が深刻化する中、コロナ禍で空いた工場のラインを活用し、環境にやさしい飲料を製造することにした。会社がある足柄平野にちなみ、「足柄聖河」と命名。箱根の観光や県内の飲食店などでのおもてなしに活用してもらいたいという。

 「足柄聖河」を発売する「富士ボトリング」は大手メーカーの清涼飲料水の製造を受託し、瓶を洗浄して再利用する事業を展開。リターナブル瓶を使った製品の生産は1996年が年間約180万ケース(1ケースは24本)だったが、全国的なペットボトル増産の流れに押され、2003年には約140万ケースに減った。

 しかし、同社によると、2015年に国連でSDGs(持続可能な開発目標)が採択されてから、リターナブル瓶の「環境へのやさしさ」が見直され、同社の事業も好転。19年の生産は過去最多の約230万ケースに上った。

 ガラス瓶飲料には高級感もあり、ホテルや旅館のほか、レストラン、パブなどの飲食店への販売が多い。昨年はコロナ禍の観光・飲食業界への打撃が影響し、富士ボトリングの生産は約85万ケースに急減した。

 そこで山崎和彦社長は稼働率が下がったラインを活用し、4年ほど前から構想していた自社製ミネラルウォーターの製造に乗り出した。丹沢と箱根の山が囲む足柄平野の地下水は大井町などの酒蔵で利用され、富士ボトリングの母体の「山崎鉱泉所」(小田原市)も大正時代から1970年代初めまでサイダーの製造に使った。自社製飲料の約50年ぶりの復活は、リターナブル瓶の環境価値の発信にもつながると考えた。

 「足柄聖河」は1本360ミリリットル。30本入りケースで販売。オープン価格。「口当たりがまろやかで、風味はすがすがしい」と説明し、瓶は20回以上再利用できるという。

 大手飲料メーカーのなかには、昭和時代から有名なある炭酸飲料のリターナブル瓶での生産を昨年で停止した企業がある。リターナブル瓶を扱う業界にはコストの課題があり、事業に慎重な傾向も根強い。全国的には、ここ数年で増産に転じた会社は多くないという。

 この状況の下で新事業に着手した山崎社長は「『足柄聖河』はホテル・旅館や飲食店に販売を進め、環境問題解決へのメッセージにしたい。足柄平野の名水を瓶で飲む高級感はライフスタイルにも輝きを与えてくれます」と語る。(村野英一)