傘寿の教授から若者へ「これからはサービス業が面白い」

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聞き手・鳴澤大
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 訪日客が増え、「コト」の消費も沸き立った直後に突如起こったコロナ禍。緊急事態宣言は解除されても、飲食、観光といったサービス業で繰り返す自粛要請のリスクは消えていない。さまざまな産業の行方は、人工知能(AI)などのテクノロジーだけでなく、感染症リスクによっても読みにくくなるばかり。子どもや学生にとっては、将来自分が就きたいと思う職業の先行きが十分には見通せなくなった。ところが傘寿を迎えた学者の目には、少し違う未来が見えている。経済記者として日本の盛衰を追った後、ビジネス人材の育成に尽力してきた千葉商科大学理事長で名誉教授(日本経済論)の内田茂男さん(80)は若者にこう伝えたいという。「勇気を持て。サービス業に商機あり」

――観光や飲食業が苦境に陥っています。

 サービス業は人が集まる、あるいは人が動くことによって成立しますが、それをコロナに伴う外出自粛の流れが直撃している。日本では就業者の約7割がサービス業でスキルある人が失業し、歴史あるホテルや旅館、レストランが潰れる事態にもなっています。

 もう一つ心配なのは、劇団や交響楽団といった文化芸術活動への影響です。地方の交響楽団などは経営が成り立たなくなっている。欧米では交響楽団は、財団や一般の寄付に加えて政府の補助金にも支えられています。日本の文化芸術は世界的にも評価が高いのにもかかわらず、支える力が脆弱(ぜいじゃく)だと露呈している。

――今すべきことは?

 今は潰れないように政府は国債発行をしてでも支援をするべきです。日本の国と地方の長期債務は合わせてGDPの2倍もあり、支援に伴う財政状態の悪化は各国共通の問題ですが、支援しないとサービス業が供給力、成長力を失ってしまいます。しかし日本は支援のやり方に問題がある。例えば飲食店対象の「時短営業協力金」は零細な店には十分であっても、それ以上の規模に向けては不十分です。行政のデジタル化の遅れもあり、一律で無駄も多い。

 ――自粛要請とちぐはぐな支援が繰り返される様子を、サービス業に興味を持つ若者たちも見つめています。

 長期的には明るい展望を持っています。ワクチン接種が広がり、騒動が落ち着けば、一気に需要が戻るからです。自由というのは人間が強く求めるもの。これまで飲食店や居酒屋に行きたいのに行けないという抑圧された需要が、コロナ後に一気に解放されるでしょう。

――需要が戻っても、築き上げられてきたサービス業の有形無形のインフラが消え、数字以上のダメージが残るかもしれません。

 目先だけ見ると悲観的になりますが、長い目で見ると違う。世の中をひっぱるのは需要です。もうかるところに経営者が出現し、供給力が生まれ、技術革新も起きます。古いものにも需要があれば供給は戻る。経済学者ケインズの表現でいう「アニマルスピリット」を持つ人が投資し、リスクを取る人も出てくる。コロナ禍でもオンラインの観劇や海外観光といった新たなサービスが広がり、ロボットも飲食店内などで活用され始めた。従来型のサービスの需要以外に、すでに新たな需要も生まれ、サービス業で技術革新が起こっているのです。

 さらに在宅勤務の普及や、ネ…

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