「インバウンドのきっかけに」海外客断念、崩れた目算

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前田大輔 小野太郎
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 近代五輪で初めて1年延期となった東京五輪・パラリンピックに、「史上初」がまた加わった。20日、海外からの一般客の受け入れ断念が正式に決まった。インバウンド(訪日外国客)回復のきっかけにしたかった菅政権だが、「完全な形での開催」は頓挫した。そもそも大会を開けるのか、という疑問に向き合うことになる。

 新型コロナウイルスの1日の感染者数が東京都内で2千人を突破し、2度目の緊急事態宣言が出た年明け。複数の組織委幹部はこの頃から、焦りを見せていた。「海外からの観客は早く諦めた方が良い。だが決定権は政府にある」。昨年末に政府、都、組織委は「観客の扱いは、政府主体で2021年春までに決める」と整理していた。

 大会準備の実動部隊の組織委にとって、観客の規模が決まらなければ、コロナ対策も具体化できない。特に63万枚の海外向けチケットは多くの事業者が絡むため、払い戻しの事務作業が複雑だ。現場からは「早く決めて欲しい」との声が上がっていた。

 一方、菅義偉首相には大会をインバウンド回復のきっかけにしたいとの意向が強く、大会直前に決めればいい、とする政府関係者もいた。

 政府は海外の観客を受け入れる前提で、入国後の2週間待機を免除し、公共交通機関の使用を認める方向で検討を進めた。さらに、スマートフォン向けアプリと顔認証を使ったシステムの開発に着手した。

 ただ、変異ウイルスが世界で広がるなどして、五輪開催へ向けた世論の逆風は強まった。2月に入ると、事務レベルで海外観客の受け入れ見送りの議論が本格化した。

 3月3日。菅首相は首都圏4都県の緊急事態宣言を再延長する方針を明らかにした。直前まで解除に前向きだったが、知事らに広がる慎重意見を前に方針を転換した。政府内では、海外客の受け入れを諦める見方が一気に広がった。

 3日夜には、政府、都、組織委、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の5者の代表者協議で「聖火リレーのスタートまでに方向性を決める」と確認。海外一般客の受け入れ断念の流れが事実上、固まった。(前田大輔)

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