大戸川ダム早期着工を 武村・自民党滋賀県連会長

聞き手・奥平真也
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 【滋賀】再び建設に向けて動き出すことになった大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)について、衆院議員で自民党滋賀県連の会長、武村展英氏(49)は推進の立場をとる。理由を聞いた。

 ――大戸川ダムは必要ですか?

 治水の観点から、誰がどう考えても必要だと思います。建設凍結から元に戻すのに、これほどエネルギーがいるのかとつくづく感じました。元々、必要性が極めて高いことから滋賀県を始めとする自治体が要望した結果、河川整備計画の中に位置づけられたもので、先人が取り組みを一つ一つ積み重ねてきたものなのです。

 治水は難しい。きちんと説明しないと住民の方々に納得していただけない。特に淀川水系は、上流に琵琶湖があって、下流で三つの主要河川(瀬田川・宇治川、桂川、木津川)が合流する。極めて複雑な洪水調節が必要です。

 ――大戸川ダムの役割は大きいと

 滋賀県内では、百本以上の1級河川が琵琶湖に注いでいますが、琵琶湖から出るのは瀬田川だけなので、大雨時には流出量よりも流入量の方がはるかに多くなります。琵琶湖や下流域での洪水を防ぐため、京都府宇治市の宇治川にある天ケ瀬ダムの役割が大きい。しかし、天ケ瀬ダムは集水面積が大きいにもかかわらず洪水調節容量は小さい。つまり、天ケ瀬ダムは治水面で大きな役割を担わされているのに発揮できる能力が小さいのです。

 大戸川ダムの建設で、天ケ瀬ダムの負担は大きく減ります。近畿地方整備局によると、天ケ瀬ダムの集水面積は約352平方キロ、洪水調節容量は2千万立方メートル。淀川水系の国・水資源機構管理ダムの中で集水面積に対する洪水調節容量が最も小さい。大戸川ダムは集水面積152平方キロ、洪水調節容量2190万立方メートル。どう考えても必要です。大戸川ダムの建設により、天ケ瀬ダムの負担をおよそ半分にすることができるのです。

 ――2008年の4知事合意では「優先順位を考えると計画に位置づける必要はない」とされました

 このたびの検証の結果、優先順位は高いとされました。瀬田川洗堰(あらいぜき)では、大雨の時に下流域の洪水を防ぐため、放流制限したり全閉操作したりします。13年と17年には堰を全閉しています。しかし、それらをすると琵琶湖の水位が上がって滋賀県側が危険になる。上流と下流の利害が対立する操作で、実際、13年の際は滋賀県内に大きな農業被害が出ました。

 ――知事合意の際は「地域のことは地域で決める」とも言われました

 地域のことは地域で決めるのは当然で、あくまで自治体の要望に基づいて国が計画を策定するのです。先人は丁寧なプロセスを経て上流と下流の対立を乗り越えてきました。嘉田由紀子・前知事は脱ダムありきでした。政治的なスタンスを超えて治水を考えるべきで、それを認識するいい機会になったと思いますが、この10年間の代償はあまりに大きすぎました。

 ――脱ダムは政争の具にされたと

 最初は田中康夫長野県知事(当時)でしたが、「脱ダム」というキャッチフレーズが世論を大きく動かしました。国交省も、あの時の熱狂的な流れにはなかなか逆らえなかったのでしょう。しかし、住民の生命を守るための治水は政治的スタンスを超えて考えるべきで、だからこそ三日月大造滋賀県知事大戸川ダム建設に合意されたのだろうと思います。

 国はいま「流域治水」を進めようとしています。流域治水とはダム新設も含めて使える手段はすべて使うということ。ダムも縦割り打破で、治水ダムのほか、これまで洪水調節に使っていなかった農業用ダムや電力用ダムなども使う。これによりダムの洪水調節能力が従来の2倍になります。菅義偉総理が官房長官時代に実現した政策です。これに関連して流域治水関連法案が今国会に出されていて、必ず成立させます。

 ――ダムは集落の水没、環境への影響など負担も大きいですが

 私のライフワークは琵琶湖の環境保全を始めとする環境問題です。環境への影響も十分考えなければなりません。しかし、蒲島郁夫熊本県知事は、昨年7月の豪雨で氾濫(はんらん)した球磨(くま)川支流の川辺川ダム建設を容認しました。日本一の清流と言われる球磨川の環境だって守りたい。しかし、地球温暖化により激甚化する豪雨にも対応しなければならない。科学的な知見を基に治水と環境のバランスをそれぞれの地域で冷静に議論する必要があるのです。(聞き手・奥平真也)

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 たけむら・のぶひで 1972年生まれ。草津市出身。衆院滋賀3区選出で当選3回。自民党滋賀県連会長や党本部の副幹事長を務める。慶大に入学し、大学在学中から衆院議員の政策担当秘書として活動した。2003年に公認会計士の資格を取り、監査法人にて民間企業や自治体の監査にも従事した。国会では、決算行政監視委員会や消費者問題特別委員会の理事を務めている。