車いすの野球部員、武器は分析 共に戦う「選手」に笑顔

渋井玄人
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(22日、選抜高校野球 具志川商8-3八戸西)

 初出場の具志川商(沖縄)には、対戦校の戦力分析などを担う車いすの部員がいる。脳性まひで幼い頃から歩くことが困難な山城来(らい)マネジャー(3年)だ。得意の動画分析をチームメートに買われ、強く誘われて入部し、憧れの甲子園にたどり着いた。

 山城君が野球のとりこになったのは高校野球がきっかけだった。2010年に甲子園春夏連覇した興南の沖縄県大会の試合を球場で見た。小学5年の時に少年野球チームに入り、車いすで走塁コーチを担った。

 中学は特別支援学校に。簿記やパソコンを学ぶため商業高への進学を希望した。思うような速さで字が書けなかったが、勉強に励んで具志川商に入った。

 入学後、教室で席が近い野球部の捕手の比嘉力太君(3年)と友だちになった。比嘉君から驚かれたのは、プロ選手の特徴に詳しく、よく分析をしていたことだった。入部を誘われたが、「足手まといになる」と思って断った。

 比嘉君は教室でたびたび入部の話をした。3カ月間誘い続けた。「とても野球が好きで、分析力はチームの力になる」と考えたからだ。「入部したい気持ちを抑えて後悔したくない」。7月に仲間に加わった。

 入部早々の8月。合宿で民宿に泊まることになった。仲間に迷惑をかけるのではと、喜舎場(きしゃば)正太監督に相談した。「そう考えることが迷惑だよ。これが甲子園出場でも行かないのか」と諭された。合宿先で風呂に入る際は、比嘉君たちが手を貸してくれた。

 チームでは仲間のプレーの動画を分析し、アドバイスをする。「自分のくせに気がついていなかったよ」と言われた時はうれしかった。他チームの動画を見て、戦力分析も担当する。得意なのは配球のパターンや投手のくせを見つけることだ。練習試合を偵察に行くこともある。

 少し遠慮がちなところがまだあるが、喜舎場監督に言われる「自分ができること」を探し、チームへの貢献を心がけてきた。監督は「一緒に戦うメンバー」として、「選手」と呼ぶ。

 母の由美さんは、合宿に山城君が参加した時はとても不安だったという。「合宿後から成長し始めた感じ。今日は後ろ姿がたのもしく見える」

 大好きな阪神戦の観戦で訪れた甲子園に、チームの一員として来た。山城君はこの日、スタンドでメガホンをたたいて応援した。試合は快勝。「甲子園で校歌を歌う目標がかなって良かった」。仲間の活躍に、夢の舞台で笑った。(渋井玄人)