デジタル化で中国が迎えた転換 日本は後進国になるのか

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聞き手 編集委員・吉岡桂子
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 新型コロナウイルス禍が世界経済に大きな打撃を与えるなかで、中国経済は回復の軌道に乗りつつある。コロナ対策でも注目されたデジタル技術を実装しながら、中国はどこへ向かおうとしているのか。日本はどう向き合うべきか。中国やアジアなど新興国の経済を研究している伊藤亜聖さんに聞いた。

「冷戦後」の終焉、迫られる修正

 ――中国政府が今年の目標とする経済成長率は「6%以上」で、市場の予想を下回りました。2025年までの経済計画では成長率の目標を示さず、慎重さがうかがわれます。

 「30年ぐらいの時間の幅でみると、中国の経済政策が修正された転換点かもしれません。中国の経済成長は東西冷戦の終わりと深く結びついていました。加速するグローバリゼーションの中で世界の工場として存在感を高めました。その『冷戦後』が終わり、政策の修正を迫られているのです。米中対立を新冷戦と呼ぶかどうかは別ですが」

 ――どんな修正を。

 「計画などでは『発展』と並んで『安全』が強調されるようになりました。改革開放にかじを切った鄧小平の「発展才是硬道理(発展こそが根本的道理だ)」という言葉の通り、中国では経済成長があらゆる問題を解決できると考えられてきました。しかし、その発展が米国との対立を生み、国家の安全を強く意識せざるを得なくなったのです」

 「もう一つの修正は、国内市場の重視です。今の方針は『双循環』と呼ばれ、国内と国際という二つの市場を結びつけて新たな発展を目指すものですが、内需の拡大や自立した技術の確保など力点は国内にあります。改革開放への言及も残りますが、個別の論点へと格下げされた印象です」

 ――15年に発表された産業政策「中国製造2025」は、技術覇権に挑むものとして米国の警戒を招きました。

 「この路線は胡錦濤政権が06年に発表した『国家中長期科学技術発展計画』で始動しています。当時は中国の技術が今ほど脅威とされていませんでしたが、バイオやロボティクス、宇宙、量子などでイノベーションの重視が強調されています。習近平(シーチンピン)政権になって書きぶりが変わったのです」

 ――というと。

 「胡政権では官僚的で実務的な文章です。それが習政権になって、冒頭から自らのスローガン『中華民族の偉大な復興』『中国の夢』を掲げ、建国100年の49年までの『製造強国の先頭グループ入り』を宣言しました。半導体など基礎材料の自給目標も25年時点で7割と高い。米国やドイツなどを刺激したため、最近は少なくとも表には『中国製造2025』を持ち出さなくなりました」

産業政策は「両刃の剣」

 ――米中対立で人や技術、情…

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