震災描く負い目 大友啓史監督「立ち会えなかったのに」

聞き手・太田原奈都乃
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 岩手出身の映画監督・大友啓史さん(54)は、東日本大震災について振り返る際、負い目のようなものを感じるという。あの日から10年。改めて震災や故郷への思いを聞いた。

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 東日本大震災で地元が一番しんどい時にその場に立ち会えなかった。そういう負い目を、ずっと感じてきた。地震の時は、大阪から東京に向かう新幹線に乗っていて、岩手の被害は後から知った。地元の方々が撮った津波の映像も見た。子どもの泣き声、大人の悲鳴が聞こえて、自分がその場にいるような錯覚にとらわれた。

 その頃、僕は、NHKから独立してエンターテインメントの世界に進もうと覚悟を決めていた。でも、エンターテインメントって無力だなと突きつけられた。自分がやろうとしていることはこの先、必要とされるんだろうかって。

 震災の体験を共有していない自分に、震災を描く資格はないと思ってきた。でも昨年公開した「影裏」では、主人公は心を許した友人を通して岩手を知っていった。その視点なら許されるのではと思った。岩手に撮影に入ると、温かく迎え入れてくれて、「帰る場所」があること、故郷のありがたみを感じた。「影裏」は、僕の中でも特別な立ち位置の作品になった。

 震災から10年、岩手で生きる人たちは、悲しみやつらさを背負いながら、それを乗り越えて生きてきた。そんな姿に力をもらったのは僕のほう。地元のために映画に出来ることって難しい。でも自分の作品を通して、感動や勇気、元気を少しでも地元の人たちに感じてもらえたらうれしい。映像コミュニケーションを志す人もどんどん増えたらいい。直接的な貢献にはならないかもしれないけれど、それが僕が自分の仕事を通じてできること。

 また、地元で撮りたい。時間をかけながら、地元の皆と一緒にまた作品を作れないかなって、思っている。(聞き手・太田原奈都乃)

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 おおとも・けいし 1966年、盛岡市出身。代表作に「るろうに剣心」シリーズなど。岩手が舞台の映画「影裏」を昨年公開。