領土の侵害?切手デザイン物議 クルド自治政府が火消し

ドバイ=伊藤喜之
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 ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇の歴史的な訪問を記念し、イラク北部のクルド自治政府が発行した切手が波紋を呼んでいる。

 教皇は今月、歴代教皇で初めてイラクに滞在。クルド人自治区も訪問し、大規模なミサを開くなどした。記念切手は計6種類あり、そのうちの一つには教皇の横顔とともに、主にイラク、トルコ、シリア、イランにまたがる歴史的なクルド人の居住地域「クルディスタン」の境界線が描かれた。1916年の英仏、ロシアによる密約「サイクス・ピコ協定」でクルディスタンを分割するように国境線が引かれ、クルド人は「国を持たない最大の民族」として離散した経緯がある。

 このデザインにかみついたのが、トルコとイランだ。クルディスタンの領域を切手に描くことは、独立国家建設というクルド人の「悲願」を表現し、各国の主権を侵害する挑戦的なメッセージだととらえたようだ。

 トルコ外務省は10日の声明で、「おこがましいクルド自治政府が、(切手で)領土的結束への非現実的な願望を表現している」と批判し、「重大な誤り」だとして即座の修正を求めた。イラン外務省の報道官も10日の記者会見でイラク政府に抗議したことを明らかにし、イランの領土も地図に含めた切手のデザインについて「国際的な原則やルールに反している」として、「非友好的な行動」だと批判した。

 一方、クルド自治政府報道官は運輸通信省がデザイン案を募集したとしながら「自治政府がデザインを承認したわけではない」と釈明、外交部門のトップも「隣国の主権を尊重している」と火消しを急いだ。一部のクルド住民からは自治政府の弱腰に批判が高まっており、場当たり的な対応が混乱を招いている。(ドバイ=伊藤喜之)