「慣例」が招いた原発の機能不全 東電テロ対策の問題点

戸松康雄
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 【新潟】東京電力柏崎刈羽原発で侵入検知設備が機能していなかったとして、原子力規制委員会が4段階で最悪の評価をしてから23日で1週間。テロ防止のため事案の詳細は明らかにされていないが、不十分な代替措置が「慣例」として続けられ、機能喪失をチェックする仕組みもなかったことなどが分かってきた。

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 原発には外部からの侵入を未然に防ぐため、多くのセンサーやカメラが備えられている。天候による劣化や作業時のミスで故障することがあり、東電は代わりとなる措置を取ってきた。

 一つ目の問題はその措置の不十分さだ。規制委の更田豊志委員長は16日の会見で「具体的な内容は話せない」としながらも、「誰が見ても、どうしてこれが代替措置になるのだというものだった。非常にお粗末なものだ」と語った。調査した16カ所のうち、10カ所は30日以上機能しない状態が続いていた。

 東電の原子力分野の責任者である牧野茂徳常務は18日の会見で「慣例に基づいてやってきた」と発言。石井武生原発所長によると、2018年にはこの措置が講じられ、少なくとも3年以上続いていたという。

 一方、規制庁の検査官は現地での聞き取りで、社員警備員から、実効性がないと認識していたとの趣旨の話を得たとされる。しかし、石井所長は「私には(報告が)上がってこなかった」。現場の声は社内で共有されていなかった。

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 二つ目の問題は、機能喪失をチェックする仕組みがなかったことだ。東電の説明では、重大な事態は直ちに規制庁に報告される。しかし、代替措置を講じれば「軽微」とみなし、月1回の報告リストに記載するだけだった。どのような措置を講じたか、具体的な内容はリストに記されず、石井所長や牧野常務にも報告されていなかった。

 柏崎市の桜井雅浩市長は19日、石井氏らと面会した後、記者団に「『代替措置を講じました』『はい、わかりました』ではチェックにも何もなっていない。『どうやったんだ』と聞くのが上司だろう」とあきれたような様子で話した。

 小早川智明社長は「福島の原点にかえり、もう一度(事故が)起きるような事態になっているのではないか、というくらいの危機感をもって取り組む」と述べ、原因究明と安全文化の立て直しに全力を挙げる考えを示した。規制庁による追加の検査は1年以上かかると見られ、東電側の作業も長期化が見込まれる。

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 東電の牧野常務は会見で「慣例」を認めた際に「適宜、規制庁の皆様方に見ていただいた」と発言していた。規制庁はなぜ3年以上続いていた問題点を見抜けなかったのか。

 一連の問題を追及してきた中山均・新潟市議は「現地立ち入り検査は毎年定期的に行われている。お粗末な状態をチェックできなかったのか、意図的に規制委に報告しなかったのか。規制のあり方が問われている」と指摘。更田委員長も16日の会見で「この事例から学ぶべきところがあるかどうかは、規制委として大きなポイントになっていくと思う」と語った。(戸松康雄)

侵入検知設備の不備をめぐる東電などの対応

1月27日 協力会社の作業員が侵入検知設備を誤って損傷。原子力規制庁に報告

2月12日 復旧状況を規制庁に説明。他に12カ所の故障があり、代替措置を講じていると説明

15、18日 計15カ所の故障と代替措置の資料を規制庁に提出

  17日 規制庁が原子力規制委員長と委員に代替措置の実効性が確認できないことを報告

  17日 石井武生所長が損傷事案の報告を受ける

  18日 規制委が臨時会合。小早川智明社長が代替措置の追加対策を指示

  19日 東電が損傷事案を公表、「代替措置を講じた」とした

  21日 柏崎刈羽原子力規制事務所が抜き打ち検査、代替措置の写真を撮影

24~26日 規制庁による現地検査。東電の警備員が代替措置に実効性がないと認識していたと認める。石井所長は代替措置が不十分との指摘を受ける

3月1日 規制委が臨時会合。検査結果が報告される

3~4日 規制庁による現地検査

  5日 東電がすべての故障箇所の復旧を報告

  10日 不正入室問題で「厳格な警備業務を行い難い風土」を要因のひとつとする報告書を規制委に提出

  16日 規制委が4段階で最悪の暫定評価

  17日 規制委が燃料装荷前の手続きの保留を決定

  18日 小早川社長が記者会見で謝罪。暫定評価の受け入れを表明。牧野茂徳常務(原子力・立地本部長)、橘田昌哉常務(新潟本社代表)の原発駐在を発表

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 県と柏崎市刈羽村は22日、安全協定に基づき東京電力柏崎刈羽原発の状況確認を実施し、東電に対し、情報発信に努めるよう求めた。

 県から3人、柏崎市4人、刈羽村2人の計9人が原発を訪れた。核物質防護の必要性から、侵入検知設備の視察は難しいとの意向が東電から伝えられたため、安全対策工事未完了の4カ所のうち、6・7号機コントロール建屋の空調施設など2カ所の状況を確認した。県原子力安全対策課の原直人課長は一連の問題を「深刻な状況と受け止めている」と述べ、安全対策工事に関して「期限を切らずに、しっかり確認をしてほしい」と語った。

 安全協定は、県と柏崎市刈羽村が必要と認めた場合は、いつでも状況確認ができる、と定めている。