ホーム転落死した盲目の恩師 安全求め弟子たちの30年

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贄川俊
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 視覚障害者が安全に歩けるように――。両目を失明した自身の経験を踏まえ、視覚障害者の安全歩行について研究に取り組んだ男性が、駅のホームから転落死して今年で30年になる。今も視覚障害者の転落事故が後をたたない中、遺志を継いだ4人の教え子たちが研究を続けている。

 この男性は、田中一郎さん。医師として東京女子医大で生理学を研究していたが、眼球を覆っているぶどう膜の炎症が原因で、40歳の時に両目の視力を失った。

 1968年に国立東京視力障害センター(現・国立障害者リハビリテーションセンター)の職員になり、視覚障害者の移動の研究を始めた。自身も歩行訓練を受け、徒歩や電車で1人で通勤できるようになった。はり・きゅう・マッサージが主体だった視覚障害者への教育に疑問を感じていた。視覚障害者の自立には、1人で歩けるようになることが重要だと言い続けた。「エビデンス(科学的根拠)にもとづいて」が口癖で、心拍数を測りながらの歩行実験を繰り返した。実験では必ず自分が最初の被験者になった。

 「医者は基礎を医学部で学ぶが、あとは患者から学ぶ」とよく話していたといい、視覚障害者の意見を大事にした。視覚障害者が1人で外に出て歩く時に強い心理的負担がかかることを明らかにし、駅ホームからの転落事例を集めて分析した。論文は、短いものも含めて100以上になる。

なぜ点字ブロックがあるホームで転落事故が起きるのか。なぜ一番詳しい田中さんが。各地の教え子たちがホームの改善に動き出しました。

 研究者として精力的に活動し…

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