鳥取の6町が犯罪被害者の支援条例 県の働きかけ受け

石川和彦
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 鳥取県内の市町村で犯罪被害者とその家族・遺族を支援する動きが出てきた。北栄、湯梨浜の中部2町と岩美、八頭、若桜、智頭の東部4町が3月の定例議会に犯罪被害者らを支援する条例案を提案し、22日までにすべて可決された。県内全市町村に条例制定を依頼してきた県は残る13市町村への働きかけを続ける。

 6町とも支援条例は犯罪被害者らが受けた被害からの早期回復と軽減を図ることを目的としている。国から支払われる給付金が手元に届くまで数カ月かかることなどから、いずれも規則をつくり、見舞金を支給する。額は遺族見舞金で30万円、傷害見舞金で10万円。安心して日常生活を送るための支援、住んでいた住居に住めなくなった場合の居住支援も盛り込んでいる。

 県は、県内の犯罪被害者自助グループ「なごみの会」から、犯罪被害者らを支援する条例の制定や経済的支援制度の創設を要望されてきた。このため、県内全市町村に条例制定を依頼する通知を出してきた。

 36人が死亡した京都アニメーション放火事件から1年の昨年7月、犯罪被害者への支援のあり方を問う報道があったこともあり、改めて条例制定依頼の通知を各市町村に出し、条例案も提示。その後、市町村の担当課長になごみの会の人たちの講演を聴いてもらったり、見舞金支給のための規則案を送付したりした。

 これに先立って、県は昨年3月、県犯罪のないまちづくり推進条例を一部改正し、犯罪被害者らの支援体制の強化を図った。見舞金を支給する市町村への補助金も準備した。補助率2分の1で、上限は遺族見舞金で15万円、傷害見舞金で5万円という内容。関連経費100万円を新年度当初予算案に盛り込んだ。26日の県議会で採決される。

 担当の木村雄二・くらしの安心推進課参事は「住民に身近な市町村でも支援に取り組み、みんなで支え、助け合うまちづくりをしてほしい」と話している。

 北栄町では、8年ほど前、町人権を尊重するまちづくり推進計画を策定。同和問題、外国人や犯罪被害者、生活困窮者らの人権問題に取り組んできた。その一環で、部落差別解消条例と併せて犯罪被害者等支援条例を制定することにし、3月の定例議会に提案した。松本昭夫町長は一般質問に答え、「『誰一人取り残さない』というSDGsの基本理念の推進につなげていきたい」と述べた。

 担当の松尾大介・人権教育推進室長は「役場は生活に密着したサービスができる。(犯罪発生の)件数に左右されず、いかに寄り添って支援するかを大事にしたい」と話している。

 警察庁の「令和2年版犯罪被害者白書」によると、昨年4月1日現在、全国1721市区町村のうち、犯罪被害者らに対する条例を制定しているのは558(全体の32・4%)で、見舞金制度を導入しているのは303(同17・6%)となっている。(石川和彦)

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 犯罪被害者とその遺族の支援を訴え続けてきた犯罪被害者自助グループ「なごみの会」代表の徳田豊さん(76)と妻さよ子さん(76)=鳥取市=は2003年1月12日、次男貴志さん(当時31)を失った。新聞報道によると、2週間前、鳥取市で男らに暴行を受け、逃げ込んだビルから転落し、頭を強く打った。

 当時、どこからもサポートがなかった。さよ子さんは手記に「話を聞いてもらったり相談をするところがあればと痛切に感じた」と書いた。夫妻らはなごみの会をつくり、「鳥取にも犯罪被害者らの支援センターを」と県と県警に訴えた。

 支援センターは開設され、なごみの会の要望もあり、今回6町で条例ができた。さよ子さんは「犯罪被害者や遺族を支援しようという機運が高まり、どこに住んでいても支援が受けられるようにしてほしい。だれでも犯罪被害者になるかもしれない。そこを理解してもらえれば」と話した。

 亡くなった貴志さんは病院のICU(集中治療室)で治療を受けた。高額な治療費は徳田さん夫妻が支払った。肺や前立腺のがん、うつ、不妊症――。夫妻と長女に次々に体の変調が表れた。治療費は自腹。「私たちが背負い込んだ病気の原因はわかっている。息子が殺された。そこから出発している」とさよ子さん。

 なごみの会の会員の多くも病気になり、夫を亡くして仕事と子育てに追われ、倒れた会員もいるという。一時的な見舞金に限らない経済的支援も訴える。