レジンアートで起業 趣味からビジネスへ

長谷川智
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 【静岡】「エポキシレジン」(レジン)と呼ばれる特殊な樹脂によるアート作品や家具作りで起業した人がいる。浜松市西区の首藤淳さん(49)で、協会を設立して講座を始め、人の輪を広げている。

 レジンは配管や船の補修などに使われる工業用の透明な樹脂。絵の具などで自由に着色できる。主剤と硬化剤を混ぜると化学反応で硬くなり、いろいろ加工できる。海や太陽をイメージした鮮やかなアート作品やアクセサリー、テーブルや時計、お盆など製品の幅は広い。

 首藤さんは自動車関係の機械設計エンジニアをしていたが、5年ほど前、海外でレジンアートが盛んに行われていることをユーチューブで知り、趣味で始めた。子どもの頃から手先が器用で、仕事柄、物作りは得意だった。楽しんでいるうちに「製品はアイデア次第で何でもできる。日本ではほとんどやっていない。ビジネスとして勝負してみたい」と起業を考えた。

 製品作りのメドは立つが、問題はどう稼ぐか。あまり縁のなかったマーケティングの勉強に月1回、東京に通った。地元の「はままつ起業家カフェ」にも相談。2019年5月に起業した。仕事場は自宅脇の小さな小屋だ。

 作品を売ろうとしたが、簡単ではない。そこでレジンアートの技術と知識を広げるため、50ページほどのテキストを作り、1冊5千円で300部ほどネット販売。続いて9万8千円のオンライン講座を立ち上げ、キット付きの個別指導を始めた。任意団体の「日本レジュクラフト協会」を設立し、資格の認定証を発行することにした。

 外出しにくいコロナ禍が追い風となり、受講生は北は仙台から南は沖縄まで75人ほど。7割が女性で、各種の教室を運営して新しい分野に出たいという人が多い。男性は物作りが好きな人が中心で、副業を考えている人もいる。

 レジンアートのコミュニティーができており、ワークショップを開催し、普及にも活用する。製品は注文を受けて5万~10万円程度で売る。自ら学んだマーケティング講座で経営を支援する事業にも取り組むなどニーズに応じて幅を広げている。50歳目前の脱サラだったが、今の年収はサラリーマン時代の「数倍」という。

 首藤さんは札幌市出身で、室蘭工大を卒業。技術系の大手人材派遣会社に入社後、浜松市に住んでいる。起業について聞いた。

 ――きっかけは何ですか。

 「現場で物作りや設計の仕事が好きだったが、管理職的な仕事が増え、体調を崩すこともあった。『好きなことを仕事にしたい』と考え始めた頃、レジンアートに出会った」

 ――今の心境は。

 「試行錯誤しながら今のようになった。思ったより早くうまくいっている。質を維持するため安売りをしないよう心がけた。好きなことは長時間やっても苦痛ではない。妻と子ども2人がいて不安もあったが、理解は得られた」

 ――同世代へのメッセージをお願いします。

 「今の会社で将来もわくわくするなら残ればいい。そうでなければ、好きなことを仕事にする道を考えることもできる。SNSの普及で個人で情報発信できる時代になった。同じことを好きな人は必ずいる。そこがビジネスになる」

 ――簡単にできますか。

 「気持ちのあり方と、仕事のやり方が重要。うまくいかなくても落胆しないよう自分の軸、信念を持つべきだ。仕事のやり方を学ぶ必要があるが、場はたくさんある。先行き不透明だから、私も今後いろいろ考え、学んでいきたい」(長谷川智)