右肩脱臼に絶望…からの復活 ベンチで見届けた友の力投

照井琢見
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(24日、選抜高校野球 東海大菅生4-3聖カタリナ)

 背番号12。聖カタリナ(愛媛)の疋田昂大(こうた)選手(3年)はベンチから、同級生の桜井頼之介(よりのすけ)投手が力投するマウンドをじっと見つめた。

 昨春まで新チームの正捕手候補だった。安定したキャッチングと肩の強さが売り。ブルペンに毎日入り、桜井投手の球を受けた。

 桜井投手とは入学してからずっと同じクラス。「まじめ」な疋田選手に、「面倒くさがり」という桜井投手。性格は対照的でも、少しずつ信頼が芽生えた。

 「桜井は変化球の投げ分けがすごい。調子が悪くても修正できる」「疋田は投げたいところに構えてくれるし、ワンバンになっても止めてくれる。一番信頼できるやつ」。教室でも一緒にふざけ合うようになった。いつしか一番の友になった。このバッテリーで、甲子園に行くと夢見た。

 昨年6月半ばの練習試合。一塁にヘッドスライディングした時、「バキッ」という音がした。右肩の脱臼だった。8月に手術し、秋からの新チームではメンバーを外れた。

 けがした時の音は今も耳にこびりついている。「絶望。打撃の調子が上がってきていたのに」

 昨秋の県大会は記録員としてベンチで見守った。自分はグラウンドにいないが、チームは勝ち進む。悔しさが募った。

 選抜をかけた四国大会準決勝の日。神奈川の実家でリハビリをしている時、LINEが届いた。「お前のために投げたぞ」

 延長12回を完投勝利した桜井投手からだった。一緒に甲子園のグラウンドに立とう。そう言われた気がした。

 練習に復帰した。どうしたらベンチに入れるか考えた。右肩は本調子ではないまま。「打たないと出られない。数振って、打撃の確実性を上げるしかない」。毎朝、素振りで人一倍振り込んだ。少しずつ、練習試合で打撃の調子が戻ってきた。越智良平監督(40)は「チームの雰囲気づくりに貢献してくれるし、選手らの支持も厚い」と言い、12番を与えられた。

 晴れの舞台の相手は強豪の東海大菅生。追い上げたが惜敗した。

 自分はプレーはできなかった。夏こそは。桜井投手が打者を打ち取る度にベンチで拍手を送り、ピンチでは伝令でマウンドに駆け寄り、励ました。(照井琢見)