第3回私の体内に化学物質が…2人の孫と娘の顔がよぎった

有料会員記事永遠の化学物質

諸永裕司
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永遠の化学物質③
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 競馬の祭典「日本ダービー」が行われる競馬場があり、競技かるたを題材にした人気漫画「ちはやふる」の舞台にもなった東京都府中市。地元の観光協会は、こんなコピーを掲げている。

 〈水と緑が薫る歴史のまち〉

 水とは、武蔵野台地に蓄えられた豊かな地下水を指している。

 在住40年になる元市議の浅田多津子さん(63)は、自宅の台所に浄水器をつけていない。地下からくみ上げられた水がおいしいと、蛇口から出るまま飲んできた。料理に使い、野菜を育てる庭の菜園にもまいている。

 だが1年ほど前、その地下水が汚染されていたと知った。PFOS(ピーフォス、ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ピーフォア、ペルフルオロオクタン酸)という、有機フッ素化合物の名前も初めて目にした。

 〈東京・多摩の水道で高濃度有害物質 井戸のくみ上げ停止〉(2020年1月8日付の朝日新聞朝刊社会面)

 記事によると、東京都は23区を除く多摩地区(30市町村、一部除く)などで、地下水を飲用に使っている。都は19年6月、過去に有機フッ素化合物の濃度が高かった多摩地区の6カ所の浄水所で臨時調査をし、うち3カ所の浄水所にある一部の水源井戸からの取水を止めた、という。

 そのなかに、浅田さんの地元、府中武蔵台浄水所の名前があった。ほかに東恋ケ窪浄水所(国分寺市)と国立中(くにたちなか)浄水所(国立市)。いずれも豊かなわき水で知られるまちだ。

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府中市の浅田多津子さんの自宅の台所=東京都府中市

 東京都水道局のホームページには、こう書かれていた。

 〈既に万全の対応をとっておりますので、ご安心ください〉〈安全な水を供給しております〉

 また、公表された府中武蔵台浄水所での濃度は次のようだった。

 11年度 110ナノグラム

 12年度 110ナノグラム

 13年度 150ナノグラム

 14年度 120ナノグラム

 15年度 150ナノグラム

 16年度 140ナノグラム

 17年度 110ナノグラム

 18年度  80ナノグラム

 この時点で、国内に飲み水の水質管理の目安となる値はなかった。約3カ月後、厚労省は暫定の目標値を、水1リットルあたりPFOSPFOAの合計で50ナノグラム(ナノは10億分の1)と定めた。1日2リットル、70年飲みつづけても健康に影響のないとされる値だという。

「いったん汚染されたら簡単には消えない」

 では、東京都がホームページに載せていない、10年度より前の濃度はどうだったのか。地下水は水源のどれくらいを占めるのか。取水を止めたら本当に安心できるのか。不安が膨らむと同時に、疑問もわいた。

 残留性のある化学物質による「体内汚染」。その知られざる実態を4回の連載でお伝えします。前回までは、大阪府摂津市で住民の血液から高い濃度の有機フッ素化合物が検出された事例を紹介しました。第3回では、別の汚染が見つかった東京・多摩地区で行われた住民たちの血液検査について報告します。

 浅田さんにはかつて、地下水…

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