イタリアでも核ゴミ問題 候補外なのに手を挙げた町長

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イタリア北部トリーノ・ベルチェレーゼ=河原田慎一
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 脱原発を決めたイタリアで、放射性廃棄物を集めて保管・処理する施設をどこに建設するかが議論になっている。国は1月に「候補地リスト」を突如公表。候補地とされた自治体がどこも猛反発する中、リストに入っていなかった一つの町が「考えてもいい」と言い出した。一体、それはなぜなのか。

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放射性廃棄物処理場の候補地に挙がった牧草地=3月3日、イタリア中部ガッレーゼ、河原田慎一撮影

 地平線まで続く牧草地、ワイン用のブドウ畑、オリーブの木が連なる林――。国が候補地に挙げた地域には、豊かな自然や農地が広がっていた。原子炉廃炉放射性廃棄物の管理をするイタリアの公共企業「SOGIN」によると、海や川からの距離や、地震リスクなどを考慮して「消去法で」検討したところ、67カ所の地域が残ったという。国はこれらの地域を抱える自治体に対し、各自治体で住民説明会を開いたり専門家委員会を設けて意見を聞いたりして、180日以内に建設予定地として手を挙げるかどうか判断するよう求めている。

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イタリアで計画されている、放射性廃棄物処理場のイメージ。廃棄物を三重のコンクリートで覆い、地表に盛り土して保管する=同国の公共企業「SOGIN」のホームページから

 計画されている処理場の広さは約150ヘクタール。廃炉作業や、医療・研究で出た中・低レベルの放射性廃棄物を、コンクリートを詰めたドラム缶に入れる。ドラム缶はコンクリート製のコンテナの中に納め、さらにそのコンテナごとコンクリートで覆われた建物に入れて300年以上保管する計画だ。処理場の建設には4年かかり、総工費は約9億ユーロ(約1170億円)。実際に建設予定地に決まれば、国からの交付金がもらえ、建設とその後の管理で、地元に4千人の雇用も見込めるという。

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放射性廃棄物はコンクリートを詰めたドラム缶(中央)に入れ、さらにコンクリートの容器や建物で三重に覆われる=イタリアの公共企業「SOGIN」のホームページから

 政府は今年1月5日、候補地となる67カ所のリストを公表。国は2036年までに国内4カ所に残る原子炉廃炉を終える計画だ。だが計画に不可欠な国の処理施設建設を進める上で最初の段階となる候補地リストの公表は、すでに約5年遅れていた。

候補地は猛反発

 候補地に挙がった67カ所を抱える自治体にとってはどこも「寝耳に水」で、一斉に反対の声を上げた。

 「ここは、町の守護聖人が水をわき出させる奇跡を起こした水源地。そんな町の歴史と文化に反するような放射性廃棄物を、絶対に置くわけにはいかない」。ローマの北50キロにあるガッレーゼのダニロ・ピエルサンティ町長(52)は、候補地となった農地でそう憤った。町の専門家委は「中程度の地震リスクもあり、候補地には適さない」とも意見している。候補地のすぐそばでワイン醸造所を営むアウグスト・オリビエーリさんは「『放射性廃棄物がある場所のワイン』と言われて、ワイン造りができるだろうか」と風評被害を心配した。

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町の守護聖人が水を湧き出させた伝説があるほこらで、放射性廃棄物処理場計画への反対を強調するダニロ・ピエルサンティ町長=3月3日、イタリア中部ガッレーゼ、河原田慎一撮影

 イタリアでは、中・低レベルの放射性廃棄物を、元原子力発電所などの各関連施設で保管してきた。使用済み核燃料など高レベルの廃棄物は、再処理のために英国やフランスに送っている。だが、欧州連合(EU)は「放射性廃棄物の最終処分は、それを出した国で行う」と定めており、処理済みの高レベル廃棄物が今後、英仏からイタリアに戻ってくる可能性もある。中・低レベルのものについても、環境保護や安全保障の面から、国ごとに集中して管理できる施設の建設が求められていた。

 では、原発があったところに施設をつくればいいのではないか? 住民も原発立地を受け入れた場所だし、放射性廃棄物を保管していることによる交付金も受けている。

 「国の計画自体は理解できる…

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