「スポーツ界に戻らない」 元女性理事を決意させた音声

有料会員記事

塩谷耕吾
[PR]

 「当分、スポーツ界に戻ろうとは思わない」

 そうきっぱり話すのは、全日本テコンドー協会の元理事で、今は民間企業の執行役員を務める高橋美穂さん(47)だ。

 スポーツ界では、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発言をきっかけに、ジェンダーバランスを見直す動きが出ている。組織委は3月、新たに12人の女性理事を選任。橋本聖子会長が目標に掲げた「女性理事40%」を達成した。

 ただ、高橋さんは「数だけを合わせても、今のスポーツ界は、組織の中で女性が頑張れる状況にはないと思う」と話す。

 2年間の理事経験で「根深い体質」を実感したという。

     ◇

 高橋さんは高校生だった1992年、バルセロナ五輪に、当時は公開競技だったテコンドーの日本代表として出場した。日大卒業後に競技を引退し、就職。結婚、出産、子育てと並行して仕事を続けていた。

 テコンドー界に戻ったのは2016年。全日本協会初の女性理事となった00年シドニー五輪銅メダリスト・岡本依子さん(49)の誘いで強化委員に就任した。

 17年6月から理事となった。理事15人の中で女性なのも、アスリート出身なのも、高橋さんと岡本さんの2人だけだった。

 全日本協会のアスリート委員長にも就任した高橋さんは、選手アンケートなどを行い、現場の要望をくみ上げた。選手が出場を希望した国際大会のエントリー漏れなど、ずさんな手続き。遠征で選手が負担する金額や合宿での練習内容。選手から挙がってくる不満を理事会で報告した。

 ただ、当時の強化担当者は金原昇会長(当時)の信頼が厚く、他の理事は批判的な意見に耳を傾けてくれなかったという。

 「私が女性だからか、アスリート出身だからなのかは分からないが、私たちの声は理事会で響かなかった」

 19年6月、業を煮やした選手側は強化体制の改善を求める要望書を理事会に提出した。それでも変化が見られなかったことから、同年9月、強化合宿を強化指定選手の大半が強化合宿をボイコットする事態となった。

 高橋さんと岡本さんは、同年10月の理事会で理事総辞職による体制刷新を訴えた。すると「話を遮られたり、別の話をされたりでまともな議論にならなかった」。金原会長に対する言動に対し、出席者から「刑事告発する」と迫られる場面もあったという。

 総辞職の採決がないまま会議は延々と続き、高橋さんが「体調が悪い。外に出してほしい」と訴えると、出席者から「外にマスコミがいるからダメだ」と言われ、扉までの道を遮られたという。

 開始から約6時間後、廊下に出た高橋さんは失神し、倒れた。過呼吸で救急搬送されるなど、会議室周辺は騒然となった。

 会議室内に残されていた録音機には、高橋さんが驚く音声が残されていた。

 その様子を見た出席者が「オ…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

【5/11まで】デジタルコース(月額3,800円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら