151キロ右腕、とことん直球 ピンチの時に上げたギア

山口裕起
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(25日、選抜高校野球 中京大中京2-0専大松戸)

 球が浮こうが、ど真ん中にいこうが、かまわない。九回2死一塁。口を真一文字に結んだ中京大中京の畔柳(くろやなぎ)亨丞(きょうすけ)が、「僕の一番の武器」という直球を続ける。最後はズバッと外角低めへ。一度も本塁を踏ませることなく、見逃し三振で締めくくった。

 剛と柔。最速151キロを誇る右腕は、とことん球威で押した。相手打者が一回からその直球を積極的に振ってきたが、「自分を信じた」と投球スタイルは変わらない。一方の専大松戸の横手投げ深沢鳳介はスローカーブを織り交ぜ、130キロ台の直球はベースの両端へ。ゴロを打たせた。

 優劣はない。ただ、対照的なタイプの投げ合いは、ピンチの場面でこそ真価が問われるものだ。

 畔柳が得点圏に走者を背負ったのは一、二、五、六回。そのすべてで、「三振を狙った」とギアを上げた。球威が増す。短くバットを握る相手にまともにスイングをさせなかった。逆に、深沢は「打者のタイミングをずらす」ことが持ち味なのに、七回2死二塁で力んだ。左打者の内角を狙った直球が甘く入り、この試合唯一の失点を喫した。

 畔柳には、最高のお手本がいた。前年のエースでドラフト1位で中日に進んだ高橋宏斗だ。チェンジアップの握りも教わったが、強く印象に残っていたのは「ピンチの時にギアを上げる姿」だった。

 剛よく柔を断ち、12奪三振。信念を貫いた先に、ひそかに狙っていた「完封勝利」が待っていた。(山口裕起)