グラブ届かず…ランニングHRに 涙の野手にかけた言葉

坂名信行
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(25日、選抜高校野球 中京大中京2-0専大松戸)

 監督やチームメートの言葉は、大切で、温かい。

 専大松戸中京大中京に0―2と小差で敗れた。試合が決まったのは七回2死二塁での2点ランニング本塁打。打球は専大松戸の左翼手・吉岡道泰選手(3年)の前へ、低く鋭いライナー。果敢に前へ飛び込んだが捕球できず、ボールは左翼フェンスへ転がっていった。

 飛び込まずにワンバウンドで処理していれば本塁へ送球してアウトにできたかもしれないし、少なくとも1失点でしのげたかもしれない。ただ、1点も許したくない緊迫の投手戦のなか、投手を助けたいと思えば思うほど飛び込みたくなる。

 吉岡選手は試合後、泣いていた。持丸修一監督は報道陣からの質問に、「後悔はしていない。あれぐらいの気持ちでやってくれないと。吉岡は悔しかったでしょうね」とにこやかにねぎらった。力投した深沢鳳介選手(3年)も「攻めたプレー。吉岡のプレーに悔いはないです」ときっぱり言った。

 筆者は1996年夏の全国選手権大会に早稲田実の選手として出場した。3番打者を任されたが2試合で8打数1安打。責任を感じた。しかし、虚無感に包まれながら歩いたスタンド裏の通路で和泉実監督から言われた言葉は今でも忘れない。「お前にヒットが出て良かったよ」。勝敗に触れないそのさりげない一言にどれだけ救われたことか。

 吉岡選手にはまだ夏がある。外野のプレーは無謀なプレーに終わるか、好プレーになるかは紙一重。再びやってくるピンチで、飛び込む勇気を持ち続けてほしい。(坂名信行)