女性への暴力防止条約 トルコが脱退表明 欧米は批判

イスタンブール=高野裕介
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 トルコ政府は、女性に対する暴力や性差別の防止を目指す国際条約からの脱退を表明した。20日に公表された大統領令で明らかになり、欧米からは批判が相次いでいる。

 「女性に対する暴力およびドメスティックバイオレンス防止条約」は2011年に欧州評議会で採択された。署名地のトルコ最大都市にちなみ「イスタンブール条約」と呼ばれる。トルコは最初の批准国だが、保守層や一部の与党幹部からは「離婚や不道徳な生活スタイルを助長する」などとの意見があった。昨夏にエルドアン大統領が批准見直しに言及したと伝えられ、動きが注目されていた。

 トルコでは夫や交際相手からの暴力がやまず、近年では年間数百人の女性の命が絶たれて社会問題になっている。イスタンブールでは20日夕、脱退に反対する女性ら数百人が集会を開き、「条約は我々のものだ」などと書かれた横断幕を掲げながら抗議の声をあげた。女性公務員のデニズさん(37)は「条約は女性を守るもので、なくなればどうなるか不安だ。政権の判断は理解できない」と訴えた。

 ロイター通信などによると、トルコの脱退表明について、欧州評議会は「破壊的で、大きな後退だ」と批判。欧州連合(EU)の外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は、「決定の見直しを求めざるを得ない」との声明を出した。また、ドイツ外務省は「誤ったシグナルを送った」、仏外務省も「影響を受けるトルコの女性たちに、仏は連帯を示す」と非難した。前政権に比べてトルコへの厳しい姿勢で知られる米国のバイデン大統領は、「深く失望した」との声明を出した。(イスタンブール=高野裕介)