四国4県、春の味 記者イチ押しの「うまいもん」

吉田博行 伊東邦昭 清野貴幸 木下広大
[PR]

 海の幸、山の幸に恵まれている四国は食材の宝庫。四国各県版では4月から、各地の食材や郷土料理、加工品などを紹介する企画「四国うまいもん」を月曜に掲載します。企画のスタートを前に、4県の記者イチ押しの「うまいもん」をお届けします。(食材の一部は4月以降、詳しく紹介します)

     ◇

 真っ白な化粧箱のふたを開けると、濃厚な甘い香りが鼻をくすぐった。同じ向きに行儀よく並んだ大粒のイチゴが真っ赤に色づいている。

 一粒つまんでほおばった。シャキッとした食感とともに、芳醇(ほうじゅん)な甘さが口いっぱいに広がる。今までに味わったことのあるイチゴの中で群を抜いていた。

 「さくらももいちご」。徳島県唯一の村、佐那河内村の特産だ。平安時代中期から1千年続くとされる、この山あいの村は寒暖差が大きい。その気候を生かして栽培され、日照時間の短い冬は夜に温室の照明をともして成長を促進する。摘果して1株あたりの実を7粒ほどに減らし、養分を十分に行き渡らせる。

 実の先端と中心部、へた周辺の3カ所の糖度が平均12度以上の基準を満たしたものが、「さくらももいちご」として出荷される。

 生産農家でつくる佐那河内ももいちご部会の栗坂政史さん(47)は「イチゴ栽培は、夏場の土づくりや水管理も大事。さくらももいちごの基準を満たすため、村の農家が手間ひまかけて育てています」と話す。

 一粒に込められた農家の情熱が、あの香りと甘さを生みだしていると知った。(吉田博行)

     ◇

 ふっくらとした分厚い白身は適度に脂がのり、コクがあって、申し訳なくなるくらい、おいしかった。

 2月の休日、松山市内のスーパーで愛媛県産の養殖マダイの切り身を手に入れ、自宅でアクアパッツァにして食べたときのこと。アサリなどのうまみを吸い込んでも、個性を失わないマダイに舌鼓を打った。

 立派な切り身は、コロナ禍で需要が落ち込んだ県産マダイのPRのため、水産会社が無料で振る舞ったものだった。

 マダイは県南部の宇和海で養殖が盛ん。主に首都圏や関西圏などに向けて出荷され、生産量は2018年まで29年連続日本一。だが昨春以降、新型コロナの影響で飲食店の休業が相次ぎ、売り上げが前年比で一時7~8割も減った養殖業者もある。

 とはいえ、味は変わらず一級品だ。県漁協の関係者は「養殖もの特有のにおいがあったのは、30年も前の話。今は天然物と遜色ない状態。4、5月の産卵後に身がやせ細る時期でも、エサによって早く体力を回復させられるので、『一年中が旬』です」と胸を張る。

 「愛媛県の魚」にも制定されているマダイ。苦境の今こそ、味わいたい。(伊東邦昭)

     ◇

 ほんのり若草色が食欲を誘う。1月、高知県室戸市の「ドライブイン夫婦岩」で、ハマアザミを初めて食べた。太平洋に面した名物食堂の店主は天ぷらにしてくれた。天つゆで味わうと歯ごたえと香りがいい。

 アザミって食えるの? その2週間ほど前、高知版の記事を読んだ驚きを思い出していた。室戸岬に自生するこのキク科植物を今の時期、住民が好んで食べていることを、先輩記者の記事は伝えていた。

 自分は東北出身で、山菜には親しんできた。春先がバッケ(フキノトウ)にウド、初夏にはタケノコにミズ(ウワバミソウ)、秋はキノコ。アザミもよく目にしたが、食用にと考えたことは一度もなかった。

 店主の妻・山下イツ子さん(74)も福岡から嫁いで初めて口にした。「お金がのうても、春になったら山のもんも海のもんもある」。亡き義母の言葉から、田舎暮らしのありがたさをかみしめる日々という。

 高知に赴任して間もなく3年。イタドリやリュウキュウのおいしさをしみじみ感じ、チャンバラ貝も味わったが、まだ知らない食材があった。ハマアザミをもっと知りたくて、室戸に何度か通うことにした。(清野貴幸)

     ◇

 採れたての太い茎に根元からかじりつく。ほのかな甘みと水分が口の中に広がる。筋はほとんどなく、かめばかむほど甘みが増した。香川県農業試験場が16年前に開発したアスパラガスの品種「さぬきのめざめ」だ。

 とにかく太くて長い。全国で広く栽培されている別のアスパラの品種は20~30センチほどのものが多いが、「めざめ」は最長で50センチほどのものも市場に出回る。

 一般的なアスパラは、根元の皮をむき、ゆでたものをマヨネーズを付けて食べるのが主流と思っていた。だが「めざめ」は根から吸った大量の水分によるみずみずしさも特長。水分を逃がさないよう、ゆでるよりも炒めた方がよりおいしく味わえると聞く。

 実際、塩焼きにして食べたり、ベーコンと炒めたりしてみた。どれもシャキシャキとした食感が心地よく、素材の甘みのおかげで薄味でもおいしく味わえた。

 旬の春には、香川県内では、うどん店が天ぷらにしてトッピングとして出し、アスパラ料理を出す店が集うイベントも開かれる。これほど県民から愛される食材も珍しい。アスパラへの興味は尽きない。(木下広大)