中国外相、中東6カ国を訪問 「対中包囲網」に対抗狙う

北京=高田正幸、ドバイ=伊藤喜之、アンカラ=高野裕介、テヘラン=飯島健太
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 米国のバイデン政権が日欧などと協調して対中圧力を強めるなか、中国の王毅(ワンイー)国務委員兼外相が24~30日の日程で中東6カ国を歴訪している。米国と緊張を抱える国々との連携を強め「対中包囲網」にくさびを打つ考えで、受け入れる側も両大国との距離感をはかりながらの対応になる。(北京=高田正幸、ドバイ=伊藤喜之、アンカラ=高野裕介、テヘラン=飯島健太

サウジ側、会談内容を非公表

 24日、最初の訪問国となったサウジアラビアではファイサル外相に加え、国政の実権を握るムハンマド皇太子が王氏と会談。中国外務省は「(皇太子が)サウジは新疆ウイグル自治区や香港に関わる問題での中国の正当な立場を支持すると述べた」と発表した。これに対し、王氏は「サウジ内政に口を出すいかなる勢力にも反対する」と応じたという。しかし、サウジ側は具体的な会談内容を公表しておらず、実際のやりとりは不明だ。

 米欧はウイグル族をめぐる人権問題で対中批判を強めている。サウジ人記者ジャマル・カショギ氏の殺害事件などで米欧の批判にさらされているサウジも、バイデン新政権の「人権外交」への対応で中国と利害が重なる面が多い。

 サウジの生命線である石油戦略も両者を近づける。バイデン政権が掲げる「グリーン経済」で世界的に石油需要の低下が見込まれるなか、サウジの国営石油企業「サウジアラムコ」のナセル最高経営責任者は21日、中国で開かれたフォーラムに「今後50年、中国のエネルギー需要を満たすことが我々の最優先事項だ」とビデオメッセージを寄せた。

 王氏は22、23日にはロシアのラブロフ外相と会談し、「人権問題の政治化」への反対などで一致した。中東歴訪でも巨大経済構想圏「一帯一路」を中心とした実利をテコに、各国をひきつける狙いとみられる。

トルコ、新疆のウイグル族に同情も…

 王氏が25日に訪れたトルコでは、米中対立の大きな火種となったウイグル族をめぐる問題について、チャブシュオール外相が会談後、「我々の考えを伝えた」とツイートした。

 トルコの人々は同じトルコ系のウイグル族の境遇に同情的で、政府も亡命を希望するウイグル族の数少ない受け皿となってきた。しかし、2019年に北京を訪れたエルドアン大統領は「新疆の人々は中国の発展と繁栄の中で幸せに暮らしている」と述べるなど、風向きが変わっている。

 トルコは18年に米国人牧師の拘束をめぐる米国の経済制裁を機に経済苦境に陥り、インフレが市民生活を直撃。中国との経済協力にも頼らざるをえず、新型コロナウイルス対策でも、中国のシノバック製ワクチンに大きく依存している。

 中国人民大学国際関係学院の王義●(木へんに「危」)教授は「一帯一路やコロナ対策でトルコは中国が必要で、新疆について以前のように中国を批判しないだろう」と話す。

中国、米イラン間で存在感狙う

 注目を集めるのが、王氏が26、27日に訪れるイランの動きだ。

 イランと米英仏独中ロが結んだ核合意から米トランプ政権が離脱した後も、中国はイランの立場に理解を示してきた。バイデン政権は合意に復帰する考えだが、イランの核開発の制限を条件としており、米国の制裁解除を求めるイランは核開発の拡大や査察の制限などで揺さぶりをかける。

 王氏は中東歴訪の直前に会談したブリンケン米国務長官やロシアのラブロフ外相ともイランの核問題を協議。調整役を担うことで、米国とイランの双方に存在感を示す狙いもありそうだ。