歌会始、2カ月遅れで開催 両陛下、コロナ収束を祈る

杉浦達朗、長谷文

 皇室の恒例行事「歌会始の儀」が26日、皇居・宮殿「松の間」で開かれた。1月に予定されていたが、新型コロナウイルス感染症の影響で2カ月余り遅れての開催となった。天皇皇后両陛下はコロナ禍の収束を願う気持ちを歌に込めた。

 今年のお題は「実」。両陛下や皇族方に加え、国内外から寄せられた1万3657首から選ばれた入選者10人、選者らの歌が独特の節回しで披露された。

 宮内庁によると、天皇陛下は、人々の願いと、人々が試練を乗り越えようとする努力が実を結び、感染症が収束するよう願う気持ちを歌に込めた。皇后雅子さまは昨年5月、お住まいのある赤坂御用地内を散歩中、梅の青々とした実を目にした際の気持ちを詠んだ。感染症の拡大で日常が大きく変わっても、変わらない自然の営みの力を感慨深く思ったという。

 秋篠宮さまは、夏の暑い日に控えめに咲く稲の花を見て、秋に黄金色の稲穂が豊かに実ることを願う気持ちを歌にした。紀子さまは、竹籠の中の熟れたカリンの実の香りに安らぎを感じ、身近な自然をありがたく思った気持ちを詠んだ。

 感染症については、寛仁親王妃信子さまや高円宮家の長女承子さまも歌にした。信子さまは、医療現場や保健所など、コロナ禍の最前線で働く人たちへの尊敬と感謝の念を込め、コロナ禍の終息を祈って詠んだ。承子さまは、感染症による日々の不便はたくさんあるものの、オンラインへの移行が進み、国際会議への出席や遠方の友人らとの交流など、時間的、距離的な制約なく集える実りもあったことを歌にした。

 儀式にも感染症が影響した。松の間にモニターが設置され、現場に来ることができない入選者がオンラインで出席した。また、感染防止策として、例年100人ほど出席していた陪聴者は3人のみに絞られた。歌を紹介する披講諸役の席にはアクリル板が置かれ、大半がフェースシールドかマスクを着けた。宮内庁によると、歌を紹介する人は事前にPCR検査も受けたという。(杉浦達朗、長谷文)

 天皇皇后両陛下や皇族方の歌は次の通り。

天皇陛下

人々の願ひと努力が実を結び平らけき世の到るを祈る

皇后さま

感染の収まりゆくをひた願ひ出で立つ園に梅の実あをし

秋篠宮さま

夏の日に咲き広ごれる稲の花実りの秋へと明るみてくる

秋篠宮妃紀子さま

竹籠に熟るる黄色の花梨(くわりん)の実あまき香りは身に沁みとほる

秋篠宮家長女眞子さま

烏瓜(からすうり)その実は冴ゆる朱の色に染まりてゆけり深まる秋に

秋篠宮家次女佳子さま

鈴懸(すずかけ)の木から落ちにし実を割りてふはふは綿毛を空へと飛ばす

常陸宮妃華子さま

野鳥くる実のなる木々に植ゑかへて君は若かる庭師と語る

寛仁親王妃信子さま

実りある日のくるためにながさるる汗は力となるを信ずる

寛仁親王長女彬子さま

地図帳にあの日見つけし茶畑の不思議な点は茶の実のかたち

高円宮妃久子さま

戸隠の森にはびこる蔓柾(つるまさき)赤き実を食(は)むは眉茶鶫(まみちやじない)か

高円宮家長女承子さま

自室より画面越しにて繫がりて旅せぬ集ひも実現したる

来年の題は…

 宮内庁は、来年の歌会始の題を「窓」とする募集要領を26日付で発表した。「窓」の文字が詠み込まれていればよく、「窓辺」「車窓」「同窓」のような熟語にしてもよい。

 応募できる短歌は1人1首で、未発表のものに限られる。受け付けは郵送のみで、締め切りは9月30日(当日消印有効)。あて先は「〒100・8111 宮内庁」とし、封筒に「詠進歌」と書き添える。詳細は同庁ホームページ(https://www.kunaicho.go.jp/別ウインドウで開きます)。