いじめもない平和な世界に 太子の教え、子どもたちに

伊藤誠
【動画】聖徳太子の実像~1400年遠忌、謎多き偉人=矢木隆晴、岸上渉撮影
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 今年は聖徳太子の1400回忌にあたり、太子が創建した世界遺産法隆寺奈良県斑鳩町)で4月3~5日、法要(遠忌)が営まれる。太子といえば、十七条憲法にうたわれた「和を以(もっ)て貴しと為(な)す」。この「和の精神」は今も町の教育の根幹として、脈々と子どもたちに伝えられているようだ。

 「人と仲よくせよ、さからうことなかれ」「怒るな、人をゆるせ」

 斑鳩町立図書館で保存されている1930(昭和5)年発行の冊子「郷土教育の実際」に、「和」の尊さを説いた聖徳太子十七条憲法を平易にした、「斑鳩校十七訓」の記述があった。

 著者は、斑鳩尋常高等小学校(現在の町立斑鳩小学校)の校長先生。教員用の指導書とみられ、「十七訓は校訓と同様に扱っている」という。学校行事などの際に太子をたたえる唱歌を児童たちが歌っている、という記述もあった。冊子発行の数年前から恒例になったらしい。盛大な儀式が行われた1300年遠忌から間もない頃だ。

 それから100年。聖徳太子は、斑鳩の子どもたちにどう語り継がれているのだろう。

 法隆寺の近くにある斑鳩小学校。昨年は新型コロナウイルスの影響で中止になったが、毎年6月、6年生は境内にある「聖徳会館」で執事長の講話を聴く行事がある。低学年も含め、春や秋の遠足でも必ず境内を通るほど身近な寺だ。

 校舎1階にある廊下の壁に、児童向けの約束事が書かれたプレートが横一列に貼られていた。

 「第4条 人の意見や考え方を尊重しよう」「第6条 困っている友達をたすけよう」「第7条 だれであれ、仲間はずれにしない」

 10年以上前、十七条憲法になぞらえて校内で作られた「らんらん17条」だ。気持ちよく学校生活を送ってもらおうという願いが込められている。その後、これらをさらに凝縮して覚えやすくした「あいさつ(A)」「けじめ(K)」「れいぎ(R)」が作られ、昨年4月に赴任した稲浦聡校長(59)も引き継いだ。

 新型コロナで全児童が集合することもままならない状態が続いているが、稲浦校長は「ぜひ、朝礼などでAKRをちゃんとしましょうと伝えていきたい」。

 町教育委員会は、1400年遠忌に合わせて新たな取り組みを打ち出した。和の精神を培う「いかるが楽(がく)」を、2021年度中にも学校の授業に導入する。町民憲章(1997年制定)にある「聖徳太子ゆかりの斑鳩のまちに住むことを誇りとし、『和』の精神を尊び、明るく豊かな郷土をつくります」を土台としたふるさと学習だ。

 小中の9年間を通して、年間に3~5時間程度実施するという。コロナ感染予防対策に追われて準備が遅れているが、内容の検討が進められている。栗本公生教育次長(56)は、「和はいじめや人権の問題にもつながる。太子の教えは町の教育の中心だと思います」と話した。

 この「いかるが楽」で教材として使われる予定の絵本がある。太子の生涯や功績を描いた「いかるがの皇子(おうじ)さま」。町が作成して2020年12月から町内小中学校の全児童・生徒らに配った。法隆寺をはじめとした町内の名刹(めいさつ)や史跡も紹介し、ガイドブック風に仕立ててある。

 ストーリーの原案を作ったのは、町観光協会の主任で、斑鳩小出身の今川理和さん(57)だ。自身、法隆寺にまつわる子どものころの思い出は多い。「太子をわかりやすく伝えられたらと思いました」

 太子の様々な通説も交えつつ、政治や仏教で果たした役割などをコンパクトにまとめた。なかでも、十七条憲法のくだりは「『第一条 和を以て貴しとなす』の精神で平和な世界を目指す一歩を踏み出したのです」とかみ砕いて表現した。

 聖徳太子の「和の心」は、今も町の教育現場にしっかりと受け継がれている。

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聖徳太子1400年遠忌法要を朝デジで生配信します

 法隆寺は4月3~5日、聖徳太子1400回忌の法要を執り行う。この法要では、朝日新聞デジタルが新型コロナウイルス感染拡大を防止する目的で法隆寺に協力。法要の様子を、朝日新聞デジタルに開設する専用ページにて動画でライブ配信する。五重塔や金堂を背景に、西院伽藍(がらん)大講堂前で執り行われる勤行や舞楽の様子を、会場外からでもパソコンやスマートフォンを使って見ることができる。(ライブ配信に使用する電波の状況により、画像が乱れたり配信が停止したりすることがあります。あらかじめご了承ください)(伊藤誠)

 4月3日午後0時半ごろ、行列が東院伽藍(がらん)を出発。太子七歳像と南無仏舎利を大講堂へ移す。法要では中宮寺(斑鳩町)や斑鳩寺(兵庫県太子町)などゆかりの寺の僧が読経する。

 4日午後1時ごろ、大講堂の前で法要。東大寺興福寺薬師寺など奈良の大寺院の僧が読経する。

 5日午後1時ごろ、大講堂の前で法要。法隆寺の僧らが読経する。法要後、行列を組み、太子七歳像と南無仏舎利を東院伽藍に戻す。行列後の舞台で、ダウン症の書家として知られる金澤翔子さんが揮毫(きごう)する。

 いずれも西院伽藍の参拝状況によって入場規制がある。その場合、大宝蔵院、東院伽藍の参拝は無料。問い合わせは法隆寺(0745・75・2555)。