太子1400回忌はにぎわうか コロナ禍に苦悩する人々

伊藤誠
【動画】聖徳太子の実像~1400年遠忌、謎多き偉人=矢木隆晴、岸上渉撮影
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 今年は聖徳太子(厩戸皇子(うまやどのおうじ))の1400回忌にあたり、太子が創建した世界遺産法隆寺奈良県斑鳩町)で4月3~5日、法要(遠忌)が営まれる。観光資源とした誘客に、町は大きな期待を寄せていた。だが、コロナ禍に水を差され、予想していたにぎわいには、まだ遠い。

 「苦渋の決断でした。1~2カ月で事態が大きく変わってしまうような状況で、『やろう』と判断するのは難しかった」

 斑鳩町のまちづくり政策課(改組のため4月1日から都市創生課)課長補佐、柳井孝一朗さん(42)が、残念そうに言った。聖徳太子1400年遠忌に合わせて、法隆寺かいわいで今月21日に予定していた「和のあかり」と、4月10日の「春宵(しゅんしょう)観能会in法隆寺」の両行事を、新型コロナウイルス感染防止のため延期せざるを得なかった。

 町が延期を発表したのは、大阪や京都などに緊急事態宣言が出ていた2月3日のことだ。「和のあかり」は、同寺の南大門前や参道をたくさんの灯籠(とうろう)やランタンで彩るイベント。2019年に始まり、今年まで計3回行う計画だった。だが、昨年はコロナで実施できず、今回もリーフレット1万6千部が刷り上がったタイミングで中止に追い込まれた。

 能楽を披露する観能会は、「聖徳太子ゆかりの地」のアピールと費用の一部をまかなうため、1月12日にクラウドファンディングで寄付の募集を開始。4月9日締め切りで目標は200万円。3月29日現在、約126万円が寄せられている。

 柳井さんは「今年は集大成と位置づけています。両方とも、年内に開催できたら」と望みをつなぐ。

 そんな中、法隆寺近くの観光案内所「法隆寺iセンター」で3月20日、「法隆寺ゆかり展」が始まった。

 主催は一般社団法人・斑鳩町観光協会。「和のあかり」や「観能会」でにぎわう時期をにらんだ特別企画だった。明治から1300年遠忌があった大正、昭和にかけて同寺の住職を務めた佐伯定胤(じょういん)、佐伯良謙(りょうけん)両師の書を中心に28点が並ぶ。展示は4月11日まで続く。

 コロナ禍で大きな催しはできない。だが、ここ3カ月だけを見ても、町観光協会は遠忌に合わせて着実にPR活動を進めてきた。

 1月28日、JR法隆寺駅の南北自由通路に再現した、法隆寺・金堂壁画を除幕。2月14日には「斑鳩と聖徳太子」と題したオンライン講演会を開き、首都圏を中心に約130人が参加した。同月3~17日も、東京・日本橋の県アンテナショップ「奈良まほろば館」で遠忌の説明パネルや写真などを展示して多くの人に見てもらった。

 2019年度に町内2カ所の観光案内所を利用した人は約11万6600人。20年度は2カ月近く業務を停止したこともあって、今年2月までで約4万人にとどまっている。

 「斑鳩を忘れんといてくださいね、という気持ち。コロナがいつ収まるかわからないが、情報発信は続けるしかありません」。浦口隆会長(72)は力を込めて言った。

 町の観光振興策は手探りが続いているが、明るい兆しも見え始めている。

 4月22日に設立が予定されている「WEST NARA広域観光推進協議会」。県西部にある斑鳩、三郷、平群、安堵(あんど)、王寺各町と大和郡山市や、各市町観光協会が連携して、大阪方面から観光客を呼び込むという。法隆寺や信貴山、郡山城跡などを観光資源として生かす戦略だ。

 昨年1月、観光庁の観光地域づくり法人(地域DMO)に登録された企業「斑鳩産業」(斑鳩町)が事務局を務める。「23年に迎える法隆寺・法起寺の世界遺産登録30周年、25年の大阪・関西万博がターゲットです」。広域観光を発案した井上雅仁社長(49)は、しっかりと狙いを定めている。

 参加各市町や観光協会は、資金を出し合って協議会運営に臨む。斑鳩町の期待はどうだろう。まちづくり政策課の柳井さんは、「御遠忌を節目として、新たなスタートを迎えるような思いです」と話した。

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 法隆寺は4月3~5日、聖徳太子1400回忌の法要を執り行う。この法要では、朝日新聞デジタルが新型コロナウイルス感染拡大を防止する目的で法隆寺に協力。4月3日~5日の法要の様子を、朝日新聞デジタルに開設する専用ページにて動画でライブ配信する。五重塔や金堂を背景に、西院伽藍(がらん)大講堂前で執り行われる勤行や舞楽の様子を、会場外からでもパソコンやスマートフォンを使って見ることができる。(ライブ配信に使用する電波の状況により、画像が乱れたり配信が停止したりすることがあります。あらかじめご了承ください)(伊藤誠)

 王寺町観光協会は毎月1回、町役場の隣にある町やわらぎ会館で、太子について学ぶ講座を開いている。4月25日は吉川真司・京都大教授、5月16日は河上麻由子・奈良女子大准教授、6月20日は岡本彰夫・県立大客員教授、7月18日は近藤本龍・叡福寺住職が講師を務める。いずれも午後1時半~3時。500円。問い合わせは町観光協会(0745・33・6668)。

 県は秋ごろから、太子ゆかりの市町村で、太子の実績を多角的に学ぶ連続リレー講座を予定している。寺や遺跡など太子ゆかりの地をめぐるウォークイベントも催すという。

聖徳太子1400年遠忌法要を朝デジで生配信します

 法隆寺は4月3~5日、聖徳太子1400回忌の法要を執り行う。この法要では、朝日新聞デジタルが新型コロナウイルス感染拡大を防止する目的で法隆寺に協力。4月3日~5日の法要の様子を動画でライブ配信する。五重塔や金堂を背景に、西院伽藍(がらん)大講堂前で執り行われる勤行や舞楽の様子を、会場外からでもパソコンやスマートフォンを使って見ることができる。(ライブ配信に使用する電波の状況により、画像が乱れたり配信が停止したりすることがあります。あらかじめご了承ください)

 4月3日午後0時半ごろ、行列が東院伽藍(がらん)を出発。太子七歳像と南無仏舎利を大講堂へ移す。法要では中宮寺(斑鳩町)や斑鳩寺(兵庫県太子町)などゆかりの寺の僧が読経する。

 4日午後1時ごろ、大講堂の前で法要。東大寺興福寺薬師寺など奈良の大寺院の僧が読経する。

 5日午後1時ごろ、大講堂の前で法要。法隆寺の僧らが読経する。法要後、行列を組み、太子七歳像と南無仏舎利を東院伽藍に戻す。行列後の舞台で、ダウン症の書家として知られる金澤翔子さんが揮毫(きごう)する。

 いずれも西院伽藍の参拝状況によって入場規制がある。その場合、大宝蔵院、東院伽藍の参拝は無料。問い合わせは法隆寺(0745・75・2555)。