前管長の死、そしてコロナ禍…太子の遠忌を前にした試練

新生活応援

岡田匠
【動画】聖徳太子の実像~1400年遠忌、謎多き偉人=矢木隆晴、岸上渉撮影
[PR]

 聖徳太子1400回忌法要は新型コロナウイルスに振り回されてきた。法隆寺斑鳩町)は法要の延期も考えたという。だが、太子をたたえる法要をやめるわけにはいかない。4月3~5日に営む。コロナ禍の法要の難しさや、今に生きる太子の教えとは何か。法隆寺の大野正法(しょうぼう)執事長(68)に聞いた。

 ――法隆寺にとって1400回忌法要の意義は?

 法隆寺の金堂の釈迦三尊像も、夢殿(ゆめどの)の救世(くせ)観音像も、太子の等身大といわれている。法隆寺は太子をまつり、太子をたたえる寺だ。100年に1度の遠忌は、もっとも大事な法要のひとつで、しっかりと準備を進めなければならない。

 私の兄で、1999年から管長を務めた大野玄妙(げんみょう)が今回の日程を決めた。初日の4月3日の旧暦が、太子の命日の2月22日にあたることが理由だ。だが、玄妙は2019年10月に肺がんで急死した。管長として01年の1380回忌、11年の1390回忌をつとめ上げ、その翌年から1400回忌を盛り上げようと講演に飛び回った。なんとしても、やり遂げるという強い使命感を持っていた。

 ――前管長が亡くなって数カ月後に新型コロナが広まった。影響の大きさは?

 関係者との打ち合わせもできず、準備がストップした。1400回忌の取り組みの先駆けとして、20年3月から特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」を東京国立博物館で予定していた。百済観音像を東京で公開するのは1997年以来になるはずだったが、中止するしかなかった。

 1400回忌の法要には多くの人にお参りしてもらい、太子をたたえてほしい。でも、大勢になれば密になる。法要を延期するか、参拝者を入れずに僧侶だけで営むか。先が見えない新型コロナに翻弄(ほんろう)され、決断に苦労した。

 1400回忌に限らず、宗教行事には祈りがある。やめるわけにはいかない。法隆寺の僧侶は、みな、太子をたたえる法要をしっかりとやるんだという使命感がある。十分な感染対策をどれだけ取れるのか不安もあったが、昨年秋ごろ、予定通りに法要を営むことを決めた。

 ――今回のコロナ対策は?

 ほかの寺の対策を学びながら、法隆寺ができる対策は何か検討を重ねてきた。今回は行列の規模を縮小し、招待者の席の間隔を空ける。参拝者の状況によっては、西院伽藍(がらん)への入場を制限することもある。

 ――太子をたたえる命日の法要の歴史は?

 太子の死後、120年ほどたった奈良時代に夢殿ができた。その10年後に行信(ぎょうしん)僧都によって、太子の遺徳をしのぶ法会「聖霊会(しょうりょうえ)」が始まったとされる。平安時代後期の1121年、500回忌のときに境内に聖霊院を建て、太子像をつくった。この聖霊院で今も命日の法要「お会式(えしき)」を営んでいる。

 10年に1度、大講堂の前に舞台を設け、舞楽を奉納する。もともとは夢殿の前に舞台を設けて営んでいたが、江戸時代の元禄年間の1070回忌から大講堂に変えた。

 ――今に生きる太子の教えとは?

 太子は日本人の心に幅広く浸透している。特定の宗派の開祖になっているわけではなく、太子に対する信仰は、かたよっていない。尊敬する人はだれか、人生の手本にする人はだれかと聞かれたら、「聖徳太子」と答える人がいるように、歴史上の偉大な人物として敬慕されている。

 太子が定めた十七条憲法の「和」の精神が受け入れられている。第一条の「和をもって貴しとなし」だ。一人ひとりの存在を認め、区別もなく、差別もなく、争いのない平和な世界をつくる。上和下睦(じょうわかぼく)で、下の人の意見を聞き入れる。

 かみくだいていえば、人はみな立派な人間ではなく、間違ったこともする。自分のことだけを考えず、相手の気持ちを尊重しよう。そのために、上下に関係なく、あらゆる意見を聞き、よく話し合う。今の世の中も、これからも、この和の精神が大切になる。1400回忌を通し、太子の教えを見直してほしい。

    ◇

聖徳太子1400年遠忌法要を朝デジで生配信します

 法隆寺は4月3~5日、聖徳太子1400回忌の法要を執り行う。この法要では、朝日新聞デジタルが新型コロナウイルス感染拡大を防止する目的で法隆寺に協力。法要の様子を、朝日新聞デジタルに開設する専用ページにて動画でライブ配信する。五重塔や金堂を背景に、西院伽藍の大講堂前で執り行われる勤行や舞楽の様子を、会場外からでもパソコンやスマートフォンを使って見ることができる。(ライブ配信に使用する電波の状況により、画像が乱れたり配信が停止したりすることがあります。あらかじめご了承ください)=おわり(岡田匠)

 4月3日午後0時半ごろ、行列が東院伽藍(がらん)を出発。太子七歳像と南無仏舎利を大講堂へ移す。法要では中宮寺(斑鳩町)や斑鳩寺(兵庫県太子町)などゆかりの寺の僧が読経する。

 4日午後1時ごろ、大講堂の前で法要。東大寺興福寺薬師寺など奈良の大寺院の僧が読経する。

 5日午後1時ごろ、大講堂の前で法要。法隆寺の僧らが読経する。法要後、行列を組み、太子七歳像と南無仏舎利を東院伽藍に戻す。行列後の舞台で、ダウン症の書家として知られる金澤翔子さんが揮毫(きごう)する。

 いずれも西院伽藍の参拝状況によって入場規制がある。その場合、大宝蔵院、東院伽藍の参拝は無料。問い合わせは法隆寺(0745・75・2555)。

新生活応援

新生活応援

新しい年度が始まる4月、入学や入社など人生の大きな転機を迎える人も多いことでしょう。心機一転、新しいことを始めたくなるときでもあります。新生活を応援する記事をまとめました。[記事一覧へ]