米沢・西明寺の市文化財「木造十一面観音坐像」修理完成

石井力
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 山形県米沢市遠山町の西明寺(さいみょうじ)の市指定有形文化財「木造十一面観音坐像(ざぞう)」の保存修理が完成した。戦国時代の16世紀後半に京都の仏師が制作したとみられ、当時、この地域を治めていた伊達氏の関与が推測される木造。劣化が進んでいたが、構造を強化し、欠損部分も補い、戸田清崇(せいしゅう)住職は「感無量です」と喜んだ。

 2019年4月から2年間かけ、東北古典彫刻修復研究所(上山市)が修理した。事業費は約410万円で、米沢市からの補助金のほか、朝日新聞文化財団も助成した。

 市教育委員会によると、十一面観音は深い慈悲で民衆の苦しみを取り除き、功徳を施す菩薩(ぼさつ)。坐像はヒノキの寄せ木造りで、像高は88センチ、台座の高さは62センチ。銘文に製造年が1588(天正16)年、制作者が京都の仏師、康住などと記されている。

 白鷹町の正念寺にある阿弥陀如来像など、同じ仏師が制作した像が県内にほかにもあることや、西明寺の近くには伊達政宗の父輝宗の菩提(ぼだい)寺・覚範寺があったことなどから、西明寺の坐像も伊達氏の関与が考えられるという。これは、京都の文化、文芸を受け入れていた伊達氏の文化事業の一環とみられ、京都との文化交流のレベルの高さや、地方文化の興隆を考えるうえで貴重なものという。

 地元では、地名から「遠山観音」や、像が座る蓮台(れんだい)がユリの根に似ていることから、「百合観音」とも呼ばれ、信仰されてきた。

 修理前の坐像は経年劣化などで、部材が多く遊離していたり、ネズミなどにかじられたりした跡があったという。このため、解体による根本的な修理を基本に、部材の補修や、欠落していた部位を新たに制作した。台座に構造材を仕込み、安定させた。

 25日に西明寺で関係者向けに完成説明会があり、修復研究所の渡辺真吾副所長が修理内容を説明した。西明寺は今後、本堂に坐像を安置し、一般公開していく予定という。(石井力)