三賞、今場所は誰の手に 横綱・大関弱いと広がる好機

竹園隆浩
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 大相撲春場所は大詰めを迎える。13日目を終え、優勝争いは3敗で関脇照ノ富士と小結高安が並び、4敗で大関の朝乃山貴景勝ら5人が追う大混戦になってきた。大関復帰をかける照ノ富士。初優勝を目指す高安。優勝なら、来場所は綱とりの可能性が出てくる2大関。それぞれの思いを乗せ、残り2日間だ。

 優勝争いとともに、場所の終盤になると関心が集まるのが殊勲、敢闘、技能の三賞。千秋楽の幕内取組前に、記者クラブや相撲協会の代表者らからなる選考委員会が開かれて決まる。横綱、大関以外の勝ち越し者から選ばれるのが条件になる。

三賞が決まる舞台裏について、自身も選考に関わってきた相撲取材歴23年のベテラン、竹園隆浩記者がポッドキャストで解説します。

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 殊勲賞は横綱に勝つか、優勝に絡んだ大関に勝つか、自身が優勝するなどした力士敢闘賞は敢闘精神あふれる力士。元は優勝に次ぐ成績が対象だったため、勝ち星が最低でも2桁は欲しい。最近は新入幕への奨励賞的な意味合いもある。技能賞は文字通り、優れた技術を発揮した力士が対象になる。

 今場所なら、殊勲賞照ノ富士高安ら大関以外が優勝すれば、受賞するとみられる。このところ関脇以下が優勝した場合には三賞を二つ受賞する例が多い。このため、3敗のまま、2人のうちのどちらかが優勝した時には、殊勲賞ともう一つ賞を取るだろう。

 敢闘賞ならともに問題ない。技能賞も照ノ富士は右四つ、左前まわしの形が良い。今場所は脇の甘さから力任せの取り口もあるが、集中した時は見事だ。高安も右からのおっつけやはず押しが光る。

 だが、この2人を含めて4敗での優勝となると、二つは多い気がする。優勝力士でもいずれか一つか。

 この2人以外では、前頭2枚目の若隆景がいい。127キロは幕内3番目の軽量だが、鋭い踏み込みからの低い重心、おっつけが目を引く。13日目に高安に勝つなど、すでに勝ち越しており、技能賞なら候補に挙がるのではないか。

 三賞は戦後の大相撲人気の回復のために、記者クラブの提案で創設された。過去の受賞力士を見ると、熱戦が思い出される。

 合計の受賞回数で見ると、1位は元関脇の安芸乃島で19度(殊勲7、敢闘8、技能4)。千代の富士、北勝海、大乃国らの横綱から奪った金星が16個で歴代1位。大関小錦の天敵とも言われた。

 2位は圧倒的なスピードで「F1相撲」と言われ、小柄ながら2度の優勝を果たした元関脇琴錦の18度(殊勲7、敢闘3、技能8)。3位は「リンゴを握りつぶす怪力」と言われた元大関魁皇で15度(殊勲10、敢闘5、技能0)だ。

 そのほか、殊勲賞では横綱北の湖に強かった元大関の朝潮が10度。敢闘賞なら張り手などの激しい相撲が持ち味だった元関脇貴闘力が10度。技能賞は逆鉾、寺尾の父だった両差しの名人元関脇鶴ケ嶺が10度獲得しているのも、古くからのファンにはたまらない。

 1人が同じ場所で三賞をすべて受賞したことも過去に5回ある。最初は大受(1973年名古屋場所、元大関)。次は「佐渡の怪童」と呼ばれた大錦(73年秋場所、元小結)。3人目が貴花田(92年初場所、後の横綱貴乃花)。4人目は出島(99年名古屋場所、元大関)。最後が琴光喜(2000年九州場所、元大関)。貴花田と出島はこの場所で優勝もしている。

 また、逆に三賞が1人もいない珍事も過去1度だけあった。18年秋場所。この時は白鵬が15戦全勝で41度目の優勝を飾り、3横綱、3大関を含む役力士全員が皆勤し、負け越しは小結の玉鷲だけだった。候補者はいたが、協会側は「上位が引き締まった場所。各力士に奮起を促すため。お情けでの賞はやらない」と主張。投票の結果、受賞者なしになった。

 横綱、大関が強いと場所の安定感はあるが、関脇以下は苦労する。一方、このところは横綱不在が続き、大関陣も不安定なため、関脇以下でも優勝、大勝ちできる現状があり、三賞も好機が広がっている。(竹園隆浩)