不要論もあるけれど…21世紀枠の意義、4校から再確認

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 2年ぶりに開催された第93回選抜高校野球大会の熱戦を見ながら、21世紀枠について改めて考えている。

 前年秋の大会成績だけでなく、部員不足、自然災害などの困難克服や、地域貢献なども加味して出場校として選考される。第73回大会(2001年)から導入された。

 ノンフィクション作家の佐山和夫さんの経験談がヒントになったと聞く。今年1月に野球殿堂入りが決まった佐山さんは若い頃、高校教師だった。「英語の朗読で1人の生徒を『うまいじゃないか』とほめた。ほんの少し上手だっただけなのに、しばらくしたら、今度は本当にうまくなっていた」

 甲子園にあと一歩届かないチームがある。大舞台を経験したら、グッと伸びる可能性があるのではないか。生徒の背中を押すような意図もあってスタートした制度だ。

 実際、導入初年度の宜野座(沖縄)と2010年の山形中央は、同年夏も甲子園に戻ってきた。後輩たちが、また甲子園出場を果たしたチームもある。

 一方で、自分たちの力を発揮できないまま敗れたチームもあった。そんな中、21世紀枠は2校から3校に増えたが、「廃止した方がいい」「実力だけで出場校を選考した方が公平だ」という声も、関係者やファンの間では出ている。

 甲子園を目指す方法は、一つでなくてもいいと思う。プロに入るような選手が集まらなくても、創意工夫をしながら力を付けている学校や、地域貢献など野球以外にも目を向けて活動する学校も評価されていい。

 今大会は4校が21世紀枠で初出場を果たし、それぞれ個性を生かして好試合を見せてくれた。具志川商(沖縄)はつい5年前、部員が9人に満たず他部から助っ人を借りている。先輩たちが野球部を存続させてくれたおかげで、この舞台に立てた。三島南(静岡)は早くから、地域の子どもたちと野球を通じて交流を続けてきた。お兄ちゃんたちが甲子園でプレーする姿が、子どもたちの夢と希望になってくれるだろう。

 少子化が進み、子どもたちの野球離れが進む中、多様性を生み出し、新しい価値を作る。21世紀枠は今の時代にこそ意義ある制度だと、4校は再確認させてくれた。(編集委員・安藤嘉浩

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