寝続けた高校時代 佐藤輝明「マイペース」貫き初本塁打

内田快
[PR]

(27日、プロ野球 阪神9―5ヤクルト) 

 「これを一歩目として、もっと積み重ねていきたい」。阪神・佐藤輝明の表情は、キャンプからこれまで見たことがない、少年のような笑顔だった。22歳はいつも言ってきた。「ホームランが一番楽しくて面白いから、打ちたい」と。

 その瞬間は一回に訪れた。2点を先制し、なお2死三塁、1ストライクからヤクルトの左腕田口麗斗(かずと)の変化球が真ん中やや低めに入ってきた。「打った瞬間に行ったと思った」。独特の高い軌道を描き、打球はバックスクリーンへ吸い込まれていった。

 前日は開幕戦の初打席で犠飛を放った。そしてこの日は誰もが期待していた本塁打を、デビューからわずか5打席目で打った。開幕カードでの新人の本塁打は、2016年3戦目のDeNA戸柱恭孝(やすたか)捕手(NTT西日本)以来だ。

 そんな規格外のルーキーを語る上でのキーワードは、「マイペース」だ。父親、高校、大学時代の指導者、本人が口をそろえる。

 兵庫・仁川学院高時代は家で始業時刻のぎりぎりまで寝た。家族が起こしても起きない。友人が迎えに来て、ようやく起きだしたという。父・博信さん(53)は「たぶん間に合ってなかった」と苦笑する。

 「周りに流されず、ひとりで黙々と練習する」(阪神の担当スカウト)タイプだからこそ、高校時代から筋力トレーニングに没頭して打球を飛ばす魅力にとりつかれ、ひたすらにその能力を伸ばしてきた。

 プロの門をたたいても、マイペースぶりは変わらない。開幕前、矢野燿大(あきひろ)監督は言った。「もう10年目の選手みたい。緊張しているのかどうかもわからへんし。ある意味、『鈍感力』というのがあるのかな。プラスの意味で」

 6本塁打したオープン戦と同じように、甘い球を逃さず、豪快なスイングでそれをとらえた。プロ初安打が本塁打というのは30年前の矢野監督(当時中日)と同じ。「レベルが違うわ。俺なんか打ってびっくりだったけど、あいつはびっくりしていないだろう」。監督はそう笑い、佐藤輝は平然と言った。「開幕戦は少し高ぶったが、今日は普段通りだった」

 技術、パワーだけではない。メンタルもまた常人ではない。(内田快)