延長戦を支えた監督兄弟の独自練習 砂場トレにマサトレ

緑川夏生
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 第93回選抜高校野球大会で延長の末に敗れた上田西(長野県)。攻守で見せた粘り強さは、吉崎琢朗監督(38)とその兄・正嗣さん(40)の兄弟が編み出した独自トレーニングによるものだった。

 23日の広島新庄との1回戦。エースの山口謙作投手(3年)は走者を背負いながらも九回まで抑え、延長戦に。最後はサヨナラ負けを喫したが、延長十二回162球を1人で投げきった。山口投手は試合後「緊張はあったが、粘る投球ができた」と話した。

 吉崎監督が2019年に監督就任後すぐに導入したのは、軟らかい足場で下半身や精神面を鍛える「砂場トレ」。その年の夏、約2週間かけて自らスコップで20センチほど掘り返し、同校のグラウンドを囲むように長さ50メートル、幅5メートルの砂場を作った。

 投手も打者も走り込んで下半身を重点的に鍛える。「体幹が鍛えられると投球もスイングも安定する。トレーニングで使われる浜辺を再現した」。吉崎監督はその狙いを明かす。

 山口投手は「平地で走るよりつらいけど、体がぶれなくなってきた」と効果を実感する。

 吉崎監督は長野県上田市出身で、佐久長聖(長野)ではエース、4番として活躍。13年に上田西のコーチに就任した。

 一方、トレーナーの正嗣さんは13年に渡独し、大迫勇也選手らサッカー海外組の日本代表選手らを支えた経験をもつ。19年に吉崎監督の依頼でチームの強化に関わるようになった。

 試合の10日前の今月13日、選手たちは正嗣さんが考案した練習「マサトレ」に校内の屋内練習場で励んだ。「田」の形をしたシートを地面に敷き、枠を踏まないよう細かく足を動かす。鍛えるのは俊敏性だ。「俊敏さを磨く」「筋力をつける」といった目的別に考えたマサトレは約200に上る。柳沢樹(たつき)主将(3年)は「器具を使ったトレーニングとは違った筋肉が刺激され、動きのキレが増した」と話す。

 ただ、正嗣さんの真の目的は「自主性と向上心を養うこと」。正嗣さんがマサトレを実演した動画を、選手が選んで確認できるようにした。直接指導する際は、一流選手から学んだ「努力を続ける」「環境を言い訳にしない」ことの大切さを説いた。

 試合後、正嗣さんは「延長戦まで集中力を切らさずに戦えた。今後は勝負どころで勝ちきれるように、限られた時間で練習を積み上げてほしい」。夏に向けてチームは動き出している。(緑川夏生)