異常事態を仕掛ける「神様役」 はやぶさ2訓練の舞台裏

構成・上月英興
[PR]

 「はやぶさ2」プロジェクトチームのシステム担当、武井悠人さん(32)=山形市出身=に、意見が割れたという2回目のリュウグウへの着陸や、今後の展望について聞いた。

 《ミッション成功の裏には、訓練の積み重ねがあった》

 探査機の運用と訓練は並行して実施していました。訓練では「神様役」としていろんな異常事態を「人間界」の運用チームに仕掛ける役割を仰せつかい、何が効果的か考えながら進めるのがすごく大変でした。ミスであり得ない状況を起こしたときは、ブリーフィングで袋だたきに遭いました。反省しつつ、「次は仕掛けてやる」と心の中で炎を燃えたぎらせました。

 こうした訓練を積み重ねずにリュウグウに着いていたら、1回目の着陸ですら危うかったのではないかと思います。降りる時にエラーが見つかりましたが、倍速で降りたり、何時間遅れで探査機にパラメータ(数値)を登録し直したりする訓練をしていたのでくぐり抜けることができました。

 時間も人もお金も限られているので、全てのケースを出題するのは100%無理。限られたチャンスの中で「これが壊れたら困る」「この前提が崩れたら安全じゃなくなる」など的確なものを出していくと、それを呼び水に議論が広がるということが分かりました。

 《リュウグウへの2回目の着陸は、挑むべきかどうか意見が割れた》

 「自信が持てない限り着陸はやれないよね」という雰囲気から始まり、何をすれば自信を持てるかという議論を2~3カ月ほど続けました。

 当時はNASA(米航空宇宙局)の探査機オシリス・レックスが小惑星への着陸をめざしていた頃。背後から虎視眈々(こしたんたん)と上回ろうとする良いライバルがいる中で、おめおめ60点で満足して帰ってこられるか。成功すれば、1回目と違う場所で地下物質が含まれる砂が採れ、全く違うサイエンスを展開できる材料になる。

 「(2回の着陸に成功すれば)何十年も破られることはないだろう」と言う科学者もいました。人類の価値になるものに貢献できる記録を打ち立てたい、という気持ちがありました。

 《武井さんは今後も、はやぶさ2に携わりたいと考えている》

 月より外の深宇宙から物質を持ち帰ってきたのは(世界で)10年ぶり4回目です。帰ってくる探査機というだけで貴重だし、愛着もわきます。

 探査機はこの先も新たなミッションがあります。小さい惑星の横を通り過ぎる時のフライバイや、高速回転している天体へのランデブーなど、新しい技術にチャレンジできるのではないかと思っています。誰かが全体を考え、判断し、準備していく必要があるので、そういう立場で仕事をしていきたいと思います。

 日本は深宇宙の旅のトップランナー。先人が積み重ねてきたわけですが、タダでは維持できません。ずっと走れるような国でいてほしいので、自分の手でそこに貢献したいです。(構成・上月英興)