コロナ禍で若者かわいそう?それ、大人の勝手な見方では

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聞き手・田中聡子 聞き手 編集委員・駒野剛 聞き手・藤田さつき
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 友達と会えない。授業はリモートばかり。コロナ禍で不自由な日常を強いられ、苦難の中から巣立ちゆく若者たち。制限された門出の場も少なくないが、どんな言葉をはなむけに贈ろうか。

小説家・西村賢太さん 「自分に責任を持って生きる。それで十分」

 コロナ禍で若者がかわいそう? 何も命を取られるわけじゃなし。そんな風に思うのは過保護な気がします。

 僕は11歳の時に父親が性犯罪で懲役刑になり家族は瓦解(がかい)。「何かを築いても、突然全部崩れる」と学びました。偏見は必ずある。これで自分はまともな就職も結婚もできない。人生の計画とか目標とか持っていても仕方ないと気付いたんです。

拡大する写真・図版小説家の西村賢太さん

 中学を卒業した2日後に、家を出ました。高校には行っていません。友人もいませんでした。極貧生活で、銭湯にも行かず、金に追われる暮らしでした。

 金がないっていうのは、本当にきつい。心底惨めな思いをするものです。忘れられないのは、17歳の頃に仕事から帰る電車賃がなくて10キロ近く歩いた時の物乞い行為です。運悪くたばこも底をつき、道ですれ違う人に「1本ください」って言ったんですね。3人に声をかけたら、3人ともくれた。いずれも目には哀れみのようなさげすみの色が、はっきりとありました。

 「いつか、いい日がくるよ」なんて言ってくれる人はだれもいなかったし、僕も思ってもいなかった。夢も目標もなく、その日を生きることに必死で、気付いたら40を過ぎていました。無計画であることと、必要に迫られたことをまかなうこと。あったのはその二つだけでした。

 いわゆる青春がないことに、さみしかったり後悔したりは全くありません。比べる相手がいなかったから。自分を「不幸だ」と感じるのだとしたら、比べてるからじゃないのかな。上をみたらキリがないもんね。ひどい目に遭い続けて、心が死んでいって、諦めて、「それでも生きていかないと」となったら、逆に自分を不幸だとすら感じなくなるのかもしれない。

記事の中盤以降では、作家の澤地久枝さんが、感染症が蔓延した満州で過ごした経験を基に語ります。最後は、集団生活になじめなかったが、休校になって「もっと色んな人と話しておけば良かった」と気がついたという、18歳のシンガーソングライター・崎山蒼志さんを紹介します。

 こういう経験がなければこの…

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