国連軽視のトランプ前政権 国連大使の苦悩と残したもの

有料会員記事

ニューヨーク=藤原学思
[PR]

 ニューヨークに本部を置く国連は、世界中の国が集まって意見を交わす外交の場だ。その国連に、「米国第一」を掲げたトランプ前政権はどのような影響をもたらしたのか。2019年9月から約1年半、米国連大使を務めたケリー・クラフト氏(59)が、オンライン取材に応じた。

 クラフト氏が在カナダ米大使を経て着任したのは、トランプ政権が17年1月に発足してから、約1年半後だった。18年末には前任のニッキー・ヘイリー氏が辞任し、国連大使は8カ月半にわたって空席になっていた。

 この時、トランプ政権は既に国連と距離を置いていた。17年10月に国連教育科学文化機関ユネスコ)、18年6月に国連人権理事会からそれぞれ脱退を表明。国連人口基金(UNFPA)や、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金も凍結していた。

 トランプ氏が、国連機関の意義に大きな疑問を持っていると感じていたケリー氏は着任前、「あなたが間違っていることを証明してみせます」と伝えたという。着任時の会見では、「人道危機、地政学的な困難が際立つ世界において、米国のリーダーシップは極めて重要だ」と意気込みを見せていた。

 最初から難関が待ち受けていた。着任直後、自らよりも1カ月半早く国連大使になった中国の張軍氏との初面会で、クラフト氏は「新疆ウイグル自治区を訪ねて、ウイグル族の人びとに直接話を聞きたい」と伝えたが、笑い飛ばされたという。朝日新聞は中国代表部にこの点について問い合わせたが、回答はなかった。

 だが、クラフト氏はその後もアフリカや中東、中南米の人道危機問題について、積極的に取り組んだ。その活動に対する評価は、国連や安全保障理事会の周辺でも悪くなかった。シンクタンク「国際危機グループ」の国連担当部長、リチャード・ゴーワン氏は「どんどんおかしくなっていくトランプ政権において、彼女は『人間的な顔』だった」と評する。クラフト氏は取材に対しても「南スーダンやベネズエラ、シリアを訪ねられなかったのは心残りだ」と語った。

 一方、サウスカロライナ州知事などを務め、知名度も高かった前任のヘイリー氏と比べ、クラフト氏が政権内で影響力を発揮できたわけでは必ずしもなかった。現職の間はあまり報道陣の取材に答えず、国連の場でも用意された原稿を読む姿が目立った。

 そんななか、20年初めごろから世界的な流行を始めた新型コロナウイルスは国連にとっても、クラフト氏にとっても試練となった。

 ニューヨークは米国における新型コロナ感染拡大の中心地となり、安全保障理事会の討論は原則オンラインで催されることになった。外交官が直接顔を合わせる機会が極端に減り、機微に触れる問題を議論することが難しくなった。

 感染拡大を受け、グテーレス国連事務総長は3月に紛争地での停戦を呼びかけ、安保理もその決議の採決に向けた議論に着手をした。クラフト氏は「事務総長の言葉に従おうと、すぐに決議案を用意した」と語る。

 しかし、決議の中に米国が「…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。