当初苦戦「逃げ出したかった」 トヨタ・KINTO社長

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千葉卓朗
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「KINTO(キント)」運営会社の小寺信也社長=岩下毅撮影
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 「まだクルマ買ってるんですか?」。こんなキャッチコピーのテレビCMが話題になった。トヨタ自動車サブスクリプション定額制)サービス「KINTO」だ。毎月定額で、頭金なし、保険料や税金といった諸経費が「全部込み」を売りにする。だが、当初は苦戦した。それが、昨年後半は契約数が前年同期比6倍以上に増加した。クルマのサブスクは広まるのか。運営会社の社長に聞いた。

新しい車の売り方を作り出せ

 ――KINTOが始まったきっかけは?

 「2017年10月、豊田章男社長に呼ばれ、『全く新しい車の売り方を作り出せ』と指示されました。車の販売は100年間変わっていない。休日をつぶして店に行って何度も商談し、値引き交渉もする。こんな売り方が将来も続くわけがない、と。自動車業界は100年に1度の大変革期と言われ、トヨタが『モビリティーカンパニー』に変わると宣言する前です。最初、ピンとこなかった。何を言っているのかな、何をやりたいのかな、と思いました。いろんなことを勉強し始めました」

 ――KINTOを手がける前は、どんな仕事をしていたのですか?

 「商品企画や海外営業などをやってきたのですが、どちらかというと、『プロジェクト屋』なんです。半年か1年くらいで新しいことを手がけて形にして、また次のプロジェクトに移る。例えば、09年に豊田社長がリコール問題で米国議会の公聴会に出席しました。そのとき、短期集中的に各方面とのコミュニケーションをする担当に突然任命されました。簡単なことは苦手で、難しいことは得意。ゴルフでいうと、木の下から打つとフェアウェー、フェアウェーから打つとラフ。そんな感じで仕事をしてきました」

実は誰でもできるサービス

 ――KINTOをはじめる上での販売の課題とは?

 「販売店もお客さんも困っていないことです。車の売り方や買い方はこんなものだと思い込んでいる。でも、世の中はデジタル化が進み、モノの売り方は進化している。車の価格は高くなり、『所有』から『利活用』の流れも出てきています。実際、若い人の車離れは進んでいて、車を買う難しさが顕在化しています。トヨタとしては、手軽に車を手に入れて楽しんでほしい。そこで、買う時のストレスを取り除いたサービスがKINTOです。一定の月額のみで、頭金はなく、故障のときの出費も保険料も税金も全部込み、販売店の店頭だけでなくネットでも契約できる仕組みを作りました」

 「KINTOの本格スタートは2019年7月。とにかく早く始めたかった。この仕組みは、販売店から車を買ってお客さんに貸す従来とは異なる手法なのですが、実は誰にでもできる。もしアマゾンや楽天が入ってきたら、すごいネットワークになる。敵が出てくる前に、先に展開すれば有利になるという考えもありました」

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「KINTO(キント)」運営会社の小寺信也社長=岩下毅撮影

 ――「サブスク」というと「○○し放題」というイメージです。

 「音楽や映画が視聴し放題のサービスなどとは同じではない。でも頭金がないから借りやすく、ルールも明確だからやめやすい。そこがこだわりで、サブスクに近いと思っています」

当初は苦戦、「逃げ出したかった」

 ――最初の1年の契約数は1日平均6件弱。苦戦しました。

 「本当に、逃げ出したかったです。どうすればサービスを知ってもらえるか、あてがありませんでした。本当に悩みました。告知が全てなので、テレビCM、ネット広告を相当打ちました」

 「金額は申し上げられないが、3年間でこれだけ使います、これでダメなら引き下がります、と株主にお願いしました。初期段階の広告宣伝費というのは相当大きくて、それに対して契約台数がすごく小さいので、全くペイしない。広告を打ってイメージが上がって、契約台数が増えるという想定でやっているんですが、うまくいかないとたちまちおかしくなる」

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KINTOの仕組み

 ――勝負の3年目に入りました。

 「お約束のところまではたどり着けそうな実感があります。昨年6月から契約数が増え始め、月間1千件超えに。事業の黒字化が見えてきました。月額が安い5年と7年のプランを追加。車種を増やして大半のトヨタ車をそろえました。昨年4月に始めたCMでは、菅田将暉さんや二階堂ふみさんら若手俳優を起用。この効果も大きかった。今では契約者の約4割が20~30代。新型コロナウイルスの感染拡大で、車の移動へのニーズが高まった影響もあります」

 ――契約が月間1千件を超え…

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