生活保護引き下げ訴訟、原告側の請求を棄却 札幌地裁

磯部征紀
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 国が2013~15年に実施した生活保護基準額の引き下げは「生存権」を保障した憲法に違反するとして、北海道内の受給者ら約130人が、自治体が生活保護費を減額した決定の取り消しを求めた訴訟の判決が29日、札幌地裁であった。武部知子裁判長は、原告の請求を棄却した。

 同種訴訟は全国29の地裁に起こされ、判決は3例目。昨年6月の名古屋地裁は原告の請求を退けたが、今年2月の大阪地裁は減額決定を取り消し、司法の判断が分かれていた。

 国は13~15年に3回、生活保護費のうち、衣食や光熱費など日常生活に必要な「生活扶助」の基準額を引き下げた。デフレによる物価下落や低所得世帯の消費実態を反映させ、見直しによる削減額は全体で約670億円とされ、削減幅は平均6・5%で、最大10%に及んだ。

 原告は14~17年、憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害されたとして、道と札幌市など5市を相手取り提訴した。

 裁判の争点は基準額の引き下げに、厚生労働相の裁量権の逸脱があったかどうかだった。

 原告側は、原油価格の高騰などで一時的な物価上昇が起きた08年を起算点としたことで物価の下落率が大きくなったと指摘し、恣意(しい)的な算定だと批判する。消費者物価指数より下落率が大きい「生活扶助相当CPI」という独自の指数に基づき、受給者の支出が一般世帯より低いとされる、テレビやパソコンといった家電の物価下落が過大に反映されたなどと主張。厚労相の判断過程に裁量権の逸脱があったと訴えた。

 一方、被告側は基準の改定には厚労相の広い裁量権が認められていると主張。08年9月のリーマン・ショックなどの影響で、賃金や物価、消費が落ちたのに基準は据え置かれ、同年以降の経済動向を反映させる必要があったと反論した。

 生活保護の受給者は昨年12月時点で約205万人、約163万8千世帯に上る。(磯部征紀)