重力を可視化しようとする 美術家が仕掛ける物理実験

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田中ゑれ奈
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 世界のシステムにとことん向き合えば、そこから少し自由になれるのか。重力を可視化しようとする美術家・植松奎二(けいじ)(1947年神戸生まれ)。個展「みえないものへ、触れる方法―直観」では兵庫・芦屋市立美術博物館の空間をフルに使い、イメージの物理実験を繰り広げる。

 高さ14メートルの吹き抜けになった円形のエントランスホール。天窓の中心から宙づりにされた石とブロンズの球体の間に、本物の隕石(いんせき)が挟まっている。地球の自転を証明したフーコーの振り子を、危ういバランスで地面につなぎとめているかのようだ。球体の中には宇宙素粒子観測装置スーパーカミオカンデ」と同じく水が入っていて、天窓を通って宇宙から降り注ぐニュートリノの存在を想像させる。

 「水」は展覧会を貫くテーマの一つとして、さまざまな作品の中に潜み、響き合う。「まちがってつかわれた机―隕石孔・結晶・水」では、鉄製の机にうがたれた隕石孔のようなくぼみに水がたまり、会期を経るにつれサビが浮き出す。人体の6割は水分で、地球の表面の7割は海。水は自分という存在と世界をつなぐ装置でもある。

 見えない重力を最もシンプルに可視化したのが、「Triangle―Stone/Cloth」。切れ目を入れて石を一つ挟み込んだ布を壁に張ると、石の重みで布に逆三角形のひだが表れる。壁が曲面になっているせいで、ひだは直線ではなく少し湾曲する。「地球の表面に三角形を描くのと一緒」と作家は言う。

 「一つの構造や存在が成り立…

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