被災児童だった2人 友情の絵本「ひとりじゃない」

石橋英昭
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 小学4年生のときに東日本大震災を経験し、それから10年、支え合ってきた宮城県東松島市の同級生同士の友情から、1冊の絵本が生まれた。「後悔しないため、今自分にできることを考えて」。震災を知らない子どもたちに、そんなメッセージを届ける物語だ。

 絵本の題名は「ひとりじゃない」。武山ひかるさん(20)が、津波で両親と祖父をなくした高橋さつきさん(20)をモデルに、絵と文を手がけた。2人は東松島市立大曲小を卒業。高校生になってからは、語り部活動も一緒にしてきた。

 物語の主人公は「さき」という名の少年。朝、母親とケンカをしてしまった日に、震災が起きる。地震の後、いったん学校にきた両親は荷物をとりに戻り、津波にのまれる。

 「なんで母親に謝らなかったのか」「なぜ帰っちゃダメと言わなかったか」。そう苦しむさきを、たくさんの人が支えてくれた。成長したさきは「生きたかった人の分まで生きる。今度は僕がみんなを助ける」と思うようになる――。

 武山さんは「『両親を亡くしてかわいそう』で終わる話にはしたくない。『後悔しないよう生きて』と、教訓を伝えたかった」と話す。高橋さんは「ずっとそばにいて私の気持ちがわかっている彼女だからこそ、書けた物語」と言う。

 武山さんは3年前の高3の夏、手書きで最初の絵本を制作。今回はそれを元に筋書きを加筆し、パソコンで作画した。クラウドファンディングで84万円を集め、300部を印刷した。

 それぞれ二十歳になり、絵本の完成も重なった「震災10年」の春。

 高橋さんは、それまで何かあるたびに、親がいないせいにしがちだった自分のことを、最近反省するようになったという。いつか飲食店を開く夢のため、地元東松島でアルバイトの日々だ。

 武山さんは、群馬県の大学の3年生になる。苦しんだり悩んだりする子らの力になりたいと、養護教諭をめざして勉強している。

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 絵本「ひとりじゃない」は税込み1200円。語り部団体「TTT of HigashiMatsushima」のフェイスブックページから申し込める。石橋英昭