気候変動「金融へのリスク勘案」 日銀総裁インタビュー

寺西和男
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 日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁が朝日新聞の単独取材に応じ、気候変動のリスクが金融システムに与える影響を中央銀行として調べる考えを示した。金融機関の経営状況などを定期的に把握する「考査」などの場を生かす。地球温暖化や脱炭素社会への移行は企業経営に影響を及ぼすが、金融安定化の面から関わりを深める。

 黒田氏は26日のインタビューで「金融システム全体として、気候変動リスクにどう対応していくかに重大な関心がある」と述べ、金融機関がどう向き合うかは重要との認識を示した。日銀は銀行や信用金庫などを対象に、考査と呼ばれる定期的な調査をしているが、こうした機会を使って気候変動が金融に与えるリスクを詳しく調べる。

 気候変動問題で産業界が抱えるリスクは主に二つある。一つは水害の多発で工場が水没するなどの物理的リスク。もう一つは、低炭素社会をめざす政策や技術の変化に伴い、企業の資産価値が落ちるなどの移行リスクだ。例えば、再生可能エネルギーの拡大で石炭や石油など化石燃料の関連産業への打撃が強まると融資した銀行にも影響する。ひいては金融システムの安定性にも響く恐れがある。金融機関が移行リスクの影響を大きく受けることを黒田総裁は指摘し、「気候変動リスクを十分に勘案し、融資や投資の方針を考える必要がある」と述べた。

 海外では脱炭素社会をめざす政府の政策対応とともに、中央銀行がどう向き合うかに関心が高まる。環境意識の高い欧州では、中央銀行が金融機関の健全性審査の中で気候変動などの影響を調べる動きが出始めた。日本でも、政府が2050年までに温室効果ガス排出量を「実質ゼロ」とする目標を掲げて脱炭素社会への移行をめざしている。日銀も金融安定化の観点からどうかかわっていくかの議論を本格化させる。

 黒田総裁は13年3月の就任から8年を迎えた。物価上昇率2%の目標について当初は「2年程度」で達成をめざしたが、23年4月までの任期中は難しい状況だ。黒田氏は「現在の金融緩和に効果がないとか、必要ないということではない」「今後ともさらにしっかり取り組むことで、時間はかかるけれど2%の目標を達成できると考えている」と強調した。(寺西和男)