1人だけ帽子の色が違う主将 志願の学生コーチの証し

渋井玄人、川辺真改
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(29日、選抜高校野球 東海大相模8ー0福岡大大濠)

 第9日の29日に登場した福岡大大濠の川本康平主将(3年)は学生コーチだ。この日はランナーコーチを務めた。普段の練習時はみなが白い帽子の中、たった一人、学生コーチが代々引き継いできたえんじ色の帽子をかぶる。

 この日の東海大相模(神奈川)戦。三塁コーチスボックスで川本主将は、緊張した様子の打席の選手に向かい、両肩を回してリラックスするよう声をかけた。

 練習ではプレーはしない。監督が考えた練習内容を選手たちに実行させることに徹する。試合では三塁ランナーコーチを担う。そんな学生コーチ制度が福岡大大濠にはある。八木啓伸監督が2010年の監督就任時、控え選手にも責任を持たせようと採用した。

 えんじの帽子はその証しだ。選手たちとは普段は友だちだ。だが帽子をかぶると、指導者としての責任感を感じるという。

 川本主将は1年の冬、学生コーチになることを八木監督に申し出た。例年、誰がやるかなかなか決まらないと聞いていた。将来、高校野球の指導者を目指しており、それには良い選択だと考えた。選手としてプレーするよう引き留められたが、意思は固かった。

 実際になってみると苦労した。新チーム始動の頃、メンバーの間でベンチで野球道具の整理ができない。気持ちに甘さがあると感じた。新入生たちの練習量も不足していた。トイレ掃除やグラウンドでの移動を早くするよう川本主将が呼びかけても、仲間たちは思うように動かない。悩んだ。

 4年前の選抜大会に出た元主将で、学生コーチも務めた大学生の亀井毅郎さん(21)に相談した。レギュラー選手とのコミュニケーションなど、亀井さんも最初はうまくいかなかったという。

 「言うべきことはきちんと言わなければだめだよ」。助言を受け、選手の性格で言い方を変えてみた。厳しい内容でも優しい口調で注意したり、あえて強い口調にしたり。選手たちが少しずつ耳を傾けるようになった。

 「プレー以外も野球につながり、きちんとするチームが強い」。その信念が徐々に浸透した。チームは4年ぶり5回目の選抜出場を決めた。

 臨んだ甲子園。1回戦は接戦を、2回戦は延長戦を制したが、29日は0―8で敗れた。試合後に川本主将は涙を浮かべた。「甲子園は夢の舞台でもあったけど、ごまかしの利かない残酷な舞台でもあった。夏に向け全国でも上にいけるチーム作りをしたい」(渋井玄人、川辺真改)