第1回「ご飯ない」19歳母へ10万円 昭和の記憶が動かした

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中塚久美子

拡大する写真・図版シングルマザーと男児=2020年9月14日、大阪府内、滝沢美穂子撮影

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 19歳ひとり親 「ご飯ない」と検索

 昨年10月18日の朝刊1面にこんな見出しの記事が載った後、これまで経験したことのない読者からの反響があった。

 「支援をしたいから、19歳のママの連絡先か支援団体を教えて」

 「怪しい者ではないことを伝えるために住所と名前を記していますが、19歳の女性には匿名で渡してください。返信不要」

 そんな電話やメールなどが朝日新聞に届いた。途中で数え切れなくなったが、200は超えた。インターネットで私(記者)の名前を検索したり、最寄りの朝日新聞の支局に電話して私の所属部署を聞いたりして、職場に直接、手紙や現金書留、食料の入った段ボール箱が配送されることもあった。

拡大する写真・図版記者の職場に届いたお菓子や絵本、おもちゃなどがぎっしり詰まった段ボール箱=2020年11月26日午後2時52分、兵庫県西宮市、中塚久美子撮影

遺産を相続させたい

 ある日は、「身寄りがなく、自分が亡くなれば財産が全額国庫に没収されるため、紙面に登場した女性に遺産を相続させたい」という高齢男性からの電話を上司が受けた。電話口で上司が「ちょっと冷静になりましょう」となだめていた。

 正直言って戸惑った。

 私は2008年から、経済的に困窮する親のもとに暮らす子どもたちが、教育の機会や子どもらしい生活を送る権利を奪われた「子どもの貧困」を取材してきた。これから未来を切り開き、社会に参加しようとする子どもの権利が、親の経済力と関係なく平等に保障されることが公正な社会だ。だが、いつも一定数の人から、親批判や「自己責任論」を投げかけられてきた。

 これまで子どもの貧困をテーマに記事で取りあげた親子に対しても、支援の申し出はあった。でも、これほどの数ではなかった。さらに今回、「自己責任論」は少数派だった。

拡大する写真・図版「19歳ひとり親、『ご飯ない』と検索」の記事掲載後、シングルマザー宛てに励ましの手紙がたくさん届いた

 一体、何が起きているのか。

 コロナ禍で困窮する19歳のシングルマザーは、大阪府内の住宅密集地の一角で、一人で赤ちゃんを育てている。親の虐待が理由で児童養護施設などで育ち、頼れる身内はいない。子どもの父親にあたる男性は、妊娠を知ると女性のもとを去った。貯金から出産や引っ越しの費用を支払うと、手元に残ったのは2万円。食料に窮し、体重は40キロまでに落ちた。女性は今、月8万円弱の育児休業給付金などで生活をつなぐ。それも2月末に切れる――。

誰も社会の隅に追いやられないための手がかりは、送り主側にあると考えた記者は、複数の送り主に取材依頼の手紙を書きました。

「75年前、5歳の私と幼い弟たちと母親の5人が、身寄りのない山陰の田舎に残され、食料を買う金もほとんどない状況で、田舎道に生えている草を片っ端から口に入れ、時にひどい下痢に悩んだ過酷な日々を思い出しました」という手紙をくれた男性に初回は会いに行きました。

 貧困という社会問題は見えに…

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