「これで2回目の督促だ! 礼がないなら、次は警察から連絡があるから待ってなさい!!」
「19歳ひとり親 『ご飯ない』と検索」(昨年10月18日付朝刊1面掲載)で伝えた、幼い男の子を育てながらコロナ禍で困窮するシングルマザー。彼女たちを支援する団体のもとに、今年1月、感謝の「督促状」が届いた。
大阪府内に住むシングルマザーの女性は、日本がコロナ禍に突入した昨年3月、1人で出産した。子どもの父親にあたる男性は、妊娠を知ると女性のもとを去った。頼れる身内はいない。手元に残ったのは2万円。具のないみそ汁で食いつないだが、体重は40キロにまで落ちた。月8万円弱の育児休業給付金などで生活をつなぐが、それも2月末には切れる――。
女性と乳児のことを伝えた記事には、多くの反響が寄せられた。私(記者)の職場の机の上には、現金書留や食品が入った段ボール箱が並んだ。女性を支援している団体を通じて、親子に届けた。朝日新聞の「お客さまオフィス」に、支援先を問い合わせてきた人に対しては、支援団体の承諾を得て団体のウェブサイトを案内した。
「思いやりの心を実行に変える力が新聞にはある。新聞の使命ですね」。こう読者に励まされたばかりだった私は、「感謝請求」の一件にショックを受けた。
貧困は個人の物語ではなく、構造的問題として社会全体で考えていくべきだと思い、それをずっと伝えてきたつもりだった記者。ほとばしる「支援」感情の矛先に、頭を抱えます。
ほとばしる「支援」感情の矛…