スエズ運河での座礁で注目の今治 国内の外航船4割所有

森田岳穂
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 エジプト東部のスエズ運河で座礁していた大型コンテナ船が29日、離礁に成功した。この事故で世界から注目を集めたのが、コンテナ船を所有する企業がある愛媛県今治市。造船や海運関連の企業が500社以上集まる世界有数の海事都市だ。船を貸し出す「船主」も多く集まり、ギリシャや香港、北欧と並んで世界四大船主とも称される。

 今治市内には造船会社が14社あり、生産する船の数は日本全体の約2割を占める。船用機器メーカーも約160社あるほか、日本と海外を結ぶ外航船を持つ会社が約70社あり、所有する外航船の数は日本全体の約4割を占めるとされる。海事関連の従業員は1万人を超すといい、地域経済の柱だ。江戸時代瀬戸内海でつくられた塩を各地に運ぶために船が集まるようになり、修理業などが盛んになったのが起源とされる。

 その今治の海事産業の中心にいるのが、国内造船最大手の今治造船だ。経営難に陥った同業他社の買収を1970年代から進めて規模を拡大。建造量で上位を独占していた重工系が事業を縮小する一方で、存在感を増した「専業メーカー」の筆頭だ。近年は中国や韓国に押されて国内造船業の厳しさが増すなか、2019年に国内2位のジャパンマリンユナイテッド(横浜市)と資本業務提携を発表するなど、業界再編の中心にもなっている。

 事故を起こした船を所有する正栄汽船は、今治造船のグループ企業。社長は今治造船の檜垣幸人社長が兼務する。社員数は29人。大型コンテナ船のほか自動車専用船や原油を運ぶタンカーなど、今治造船がつくった船を海運会社に貸し出す同社の船主部門といえる企業だ。所有する船舶は100隻以上だという。

 船を貸し出す際の契約には、船だけを貸す場合と、乗員も含めて貸す場合がある。今回は乗員も正栄汽船が手配していたという。事故で通行待ちを余儀なくされた他の船の荷主らへの賠償責任を正栄汽船がどの程度負うかは、船を借りて運航していた台湾の長栄海運との契約内容や、事故原因などによって判断されるとみられる。(森田岳穂)