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遅咲きの漫画家・こしのりょうを本気にさせた看護師の妻

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佐藤陽
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 こしのりょうさんは遅咲きの漫画家である。36歳のとき、看護師の活躍を描いた「Ns’(ナース)あおい」がヒット、テレビドラマ化された。その後、医療系の漫画を中心に描き続けている。

 1967年、新潟県生まれ。「週刊現代」で連載した「町医者ジャンボ!!」もテレビドラマ化された。同誌でゴルフ漫画「人生はバウンスバック」連載中。今月下旬に単行本「バウンスバック」1巻を発売予定。

 子どものころから、漫画雑誌を愛読した。高校のころ、江口寿史さんによるスポ根ボクシング漫画「エイジ」にハマった。ボクシング嫌いな主人公が成長していく姿に魅せられた。「こういうリアルなプロセスを描いてみたい、と思ったんです」

 当時70代だった祖母の言葉も、印象に残った。「この続き、ケンシロウはどうなるんだろうね?」。少年ジャンプの「北斗の拳」を毎週楽しみにしていたのだ。祖母の生きがいになった漫画のすごさを感じた。いつしか「俺も漫画家になりたい」という思いが芽生えていった。

 大学のとき、漫画誌のコンテストに入賞。広告会社に勤めながら、時々漫画を発表するスタイルを続けてきた。転機は30歳のころに訪れた。出版社から連載を打診された。広告会社に勤めながらでは難しい。

夫として親として責任を果たせるか

 悩んだ。これまでの人生を振り返った。何かに死ぬほど努力してきたことって、なかった。勉強も部活も、すべて中途半端だった。「今こそ挑戦しないと。このまま人生過ぎていいのか?」「でも、家族を巻き込んでいいのか。夫として親として責任を果たせるか」――。二つの思いのはざまで気持ちは揺れた。

 最終的には、「やる」と決め、覚悟を妻(52)に伝えた。「会社をやめて、漫画家にならせてください」。まだ長女(24)が生まれたばかりだった。「だめだ」と言われると覚悟をしていたら、予想外の言葉が返ってきた。

 「後悔したまま生きていかれ…

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佐藤陽
佐藤陽(さとう・よう)朝日新聞文化くらし報道部・be編集記者
横浜総局時代に、超高齢化の実態や取り組みを描いた「迫る2025ショック」を2年半連載、『日本で老いて死ぬということ』(朝日新聞出版)として出版した。台湾でも翻訳された。自身の心の病をきっかけにメンタルヘルスの取材も続ける。早稲田大学非常勤講師として「産業社会のメンタルヘルス」の講義を担当する。