名古屋の幼稚園、日照権で一部勝訴 元園児ら喜び 愛知

編集委員・伊藤智章
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 半分勝った――。30日、名古屋教会幼稚園(名古屋市中区)南側のマンション建設をめぐる損害賠償請求訴訟の名古屋地裁判決。法廷後の集会で弁護士が切り出すと、わっと拍手がわいた。元園児9人を含む約40人の参加者の中には涙をぬぐう保護者の姿もあった。

 利益追求のために子どもの権利が疎外されていいのか。こんな議論から始まった訴訟は、この日も法廷に元園児の小学生がずらり並び、きょとんとしたまま判決に聴き入った。同市瑞穂区名東区の別のマンション紛争の当事者たちも駆けつけた。

 幼稚園は名古屋市役所から徒歩10分の幹線道路沿いにある。園舎の真南に15階建てマンションが建った。日照を確保するため、園庭の南側に建っていた牧師館を撤去したが、冬場に日が当たるのは午前だけ。強いビル風で子どもが倒れることもあるという。入り口には、「おひさまを守りたい」という横断幕を掲げたままだ。

 一部勝訴とはいえ、状況はもう変わらない。それでも石原ゆかり園長は、今回の判決が「今後に影響するはず」とみる。判決が「条例の求める協議が、不十分」と指摘したからだ。条例とは、教育施設に影響する場合に「配慮や協議」を義務づけた市の中高層建築物紛争予防条例で、2000年に施行された。

 幼稚園東側は別のオフィスビルが工事中で、さらに別のビル計画が出る可能性もある。その時、今回の判決が、業者との協議で武器になるはずと期待する。

 原告側弁護団は「十分な協議をさせなかった」として、条例を所管する市の建築行政も批判。ほかの紛争でも関与を強めるよう求めている。

 判決に同市建築指導課担当者は「びっくりした」と驚いた様子だった。業者が敷地の西寄りに建物をずらすなど、むしろ一定の配慮をしたとみていたからだ。原告らとの認識の違いについて、「市には譲歩を強制する権限もない」とする。同課によると、条例対象の中高層建築は年間400~500件で横ばいだが、市への苦情件数はかつて同40~50件だったのが、10件以下にとどまるという。(編集委員・伊藤智章)